ケニアの元協力隊員がソーシャルビジネス、サイザル麻のインテリアバスケットを日本で1カ月1000個販売!

サイザル製のインテリアバスケットを編むケニア人女性。サイザルは「貧乏人の味方」と形容されるほど、乾燥に強く、どこでも育ち、また繊維がとれるため用途が多い有用な植物(写真提供:アンバーアワー)サイザル製のインテリアバスケットを編むケニア人女性。サイザルは「貧乏人の味方」と形容されるほど、乾燥に強く、どこでも育ち、また繊維がとれるため用途が多い有用な植物(写真提供:アンバーアワー)

ケニア南部の街マチャコスの女性が作るサイザル麻製のインテリアバスケット「ORIKAGO」が人気を呼んでいる。インターネットやデパートの催事場など、多いときは1カ月の販売数が1000個以上。販売元のアンバーアワー(本社:千葉県松戸市)の木村陽介代表は2014年3月、青年海外協力隊員として派遣されたマチャコスから帰国し、同社を立ち上げた。

ORIKAGOの人気の秘密は、色のバリエーションの多さと柔軟性だ。自然素材を使ったバスケットはナチュラルカラーが多いが、ORIKAGOは50〜60種類のカラーで200種類のデザインをそろえる。また、ORIKAGOの原料であるサイザルは綱引きのロープに使われるほど丈夫なのに柔らかく、折り曲げることも可能。バスケットの高さを自由に変えられるという特徴をもつ。

サイズは5種類ある。一番小さいものは丸型のSSで直径、高さともに15センチ(価格は税抜き1900円)。一番大きいものは楕円形で、長軸40センチ、短軸30、高さ14センチ(同4400円)。サイザルはケニアでは家畜用ロープやかご型のかばんとして使われる。「自然素材で作ったかばんは他にもたくさんある。だから競争が少ないインテリアバスケットに力を入れている」と木村さんは話す。織り機を導入して平織りを開発することで、パスケースなど小物作りにも挑戦中だ。

ORIKAGOを作るのは、マチャコスで暮らす女性およそ250人。雇用形態は常勤だったり、自宅でバスケットを編む出来高制だったりさまざま。教育機会がなかった女性でもやる気さえあれば参加できるようにし、雇用を増やしてきた。2019年中に300人まで増やしたい、と木村さんは意欲を燃やす。

だが苦労も絶えない。一番の悩みは品質をいかに安定させるかだ。新しい女性スタッフを雇っても、最初の2~3カ月は作る製品の形や大きさがバラバラで、色むらがあるものが出てくる。これだとケニアでは売れても、日本では商品にならない。

スタッフ教育で木村さんが意識するのが、日本とケニアで求められる品質の違いに気づいてもらうこと。日本の顧客の声を伝えたり、日本の商品を見てもらったりしている。ケニアで走る中古の「トヨタ車」も教材になる。トヨタの車は品質が良く、多少雑に扱っても長持ちすることから、ケニアでも人気だ。「トヨタの車を作る日本人が好きなのはどんな品質?」と問いかける。日本など先進国の工場で働く人たちの様子を動画で見せることもある。

木村さんは、青年海外協力隊員としてケニアに派遣される前から帰国後のビジネスを構想していたという。

雨が少なく、農業に向いていないマチャコスの女性たちはかねて、国内向けにサイザル製のかばんを作っていた。ところが中国製のかばんやビニール袋が入ってきたことで、作っても売れにくくなっていた。「サイザルの素晴らしい素材、マチャコスの女性の伝統的な技術、働きたいと思っている人たち。それらを生かすことはできないかな? 商品を日本で売ったらどうかな?」と、ケニアでの滞在中にビジネスとして成立するかどうかを見定めていた。

アンバーアワーが売るインテリアバスケット「ORIKAGO」の数々。「インテリアとしてさまざまな空間に馴染む今までにない“魅せる収納かご”」と木村陽介代表は話す(写真提供:アンバーアワー)

アンバーアワーが売るインテリアバスケット「ORIKAGO」の数々。「インテリアとしてさまざまな空間に馴染む今までにない“魅せる収納かご”」と木村陽介代表は話す(写真提供:アンバーアワー)