創立30年のNGOインターバンド、カンボジアPKOの殉職者・中田厚仁さんを題材に平和教育

絵本「中田厚仁物語」を手に持つ、コンポントム州のアツ小・中学校の子どもたち絵本「中田厚仁物語」を手に持つ、コンポントム州のアツ小・中学校の子どもたち

紛争の予防と解決を目的に活動する国際協力NGOがある。インターバンド(本部:東京・四ツ谷)だ。現在の活動の柱は、カンボジア中部のコンポントム州にある公立のアツ小・中学校で補習授業をする教師への給料の負担と平和教育の実施。アツ小・中学校は、カンボジアの国連平和維持活動(PKO)にかかわっていた国連ボランティア(UNV)の中田厚仁さんが1993年に殺されたことを受け、98年に設立されたものだ。

ナカタアツヒト学校で補習授業

インターバンドの活動先は、コンポントム州のプラサットサンボ郡アツ村にあるアツ小・中学校。貧しい農家の子どもが多く通う学校だ。

補習授業を受けるのは、学習についていけない50人の子どもたち。勉強よりも家の手伝いをしなくてはならず、授業に出られなくなった子どもも少なくないという。

2019年から補習授業を担当するのは、23歳の女性教師リン・ソウソフィアさんだ。6年生のクラスの担任を務めるかたわら、平日の午後2~4時の2時間、クメール語の読み書きと計算を教える。ソフィアさんは「子どもたちの学習レベルはそれぞれ違う。苦労も絶えない。それでも基礎学力が足りない子どもがいなくなるまでこの授業を続けていく」と意欲的だ。

ソフィアさんによると、補習授業の成果が出て、成績が上がった子どもは多いという。3年前に小学5年生だった男の子は、初めは文字すら書けなかった。だが補習授業を休まずに受け続けた結果、通常のクラスでも上位の成績に。現在は首都プノンペンの中学校で勉強を続けている。

インターバンドの主な役目は、ソフィアさんが補習授業を続けられるよう給料を払うことだ。2022年4月に実施したクラウドファンディングでは、補習授業の今後4年分の給料を調達した(1カ月およそ1万1200円を払う)。このプロジェクトを日本側で担当する大学生は「今後も継続して支援する」と話す。

1 2