ボリビア産アルパカ100%のマフラーを販売するジョエル、アイマラ族の女性の収入アップに

アルパカ100%のマフラーの作り手のアイマラ族の女性たち。ボリビアの最大都市ラパスのエルアルト地区でアルパカ100%のマフラーの作り手のアイマラ族の女性たち。ボリビアの最大都市ラパスのエルアルト地区で

コロナで売れ行き低迷

ただ現実はそう甘くない。コロナ禍での外出自粛が続き、マフラーは売れなくなった。ジョエルとAYNIの経営は一段と厳しさを増していくばかりだ。

「新型コロナの影響で、日本や他の先進国での販売がストップしてしまった。そのためAYNIへのマフラーの発注が滞り、路上でパンを売る仕事を始めた女性もいる」(猪岡さん)

困難が続くなか、貧困や差別に苦しむアイマラ族の女性のために奮闘し続ける猪岡さん。その原体験は、2012年にメキシコで目にした圧倒的な格差だ。

「メキシコシティに住んでいたとき、子どもが外で物ごいをしているのに、道行く大人たちから見向きもしない光景を見た。その大人たちも生きるのに必死だし、責められない。ただこんなことになぜなっているのか。言葉にならない憤りを感じた。何もしないという選択は私の中にはなかった」

猪岡さんはこう振り返る。

フェアトレード市場を大きく

猪岡さんは2014年1月、ジョエルを起業した。東京都創業補助金にも採択された。

「WFTOのディレクター(当時)に相談したところ、AYNIを紹介してもらった。ボリビアへ行き、AYNIの人たちと一緒に、日本の市場向けの商品開発などを進め、その年の3月には輸入販売をスタートさせた」(猪岡さん)

安価な大量生産の商品が巷にあふれる中、フェアトレード商品をどう売り出していくのか。模索は続く。

猪岡さんが目指すのは、搾取や排除の上に成り立つビジネスではなく、すべての人や環境に良いビジネスモデルをもっと普及させること。「今後は、アンデスの広大な自然、先住民の文化に残る伝統的で素朴な模様、それにモダンさを融合させた商品を作っていきたい」と意気込む。

脱大量生産・大量消費への思いからジョエルは物販以外にも、国際協力をテーマにしたワークショップを高校や大学で開いてきた。「日本のフェアトレード市場は、経済規模のわりには他の先進国と比べて圧倒的に小さい。社会人になっていく学生たちの教育にかかわり、フェアトレードの意義などを伝えていきたい」と猪岡さんは語る。

体だけでなく心も温まるアルパカ100%のマフラー。ユニセックスでモダンかつカラフルなデザインが特徴だ

体だけでなく心も温まるアルパカ100%のマフラー。ユニセックスでモダンかつカラフルなデザインが特徴だ

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