富士山より高い&氷上を走るマラソンがインド・ラダックにあった! 気候変動のリアルを知って

世界一標高の高い氷上マラソンである「パンゴン湖氷上マラソン」に挑む参加者ら。2023年2月に開催(写真提供:チャンバさん)世界一標高の高い氷上マラソンである「パンゴン湖氷上マラソン」に挑む参加者ら。2023年2月に開催(写真提供:チャンバさん)

「マラソンを通じて、持続可能な生活スタイルを伝えたい」。こう話すのはインド北部のラダック連邦直轄地でラダック・アドベンチャー・スポーツ財団の代表として活動するチャンバ・ツェタンさんだ。同財団は、ラダックの行政機関であるラダック自治山間開発会議と協力して2023年2月、チャンバさんの地元であるラダック東部のパンゴン湖で「第1回パンゴン湖氷上マラソン」を開催した。

75人全員が完走!

パンゴン湖氷上マラソンは世界屈指の過酷さをもつ21キロメートルのハーフマラソンだ。コースは、パンゴン湖の水が凍った氷の上。気温がマイナス20度のなか、スパイクの付いた特殊なシューズを履いて走る。

またカラコラム山脈とヒマラヤ山脈に囲まれたパンゴン湖の標高は4273メートルと、富士山(3776メートル)より約500メートルも高い。氷上マラソンとしては世界で最も標高の高い大会としてギネス世界記録に登録されている。

記念すべき第1回にエントリーしたのは、ラダック出身者25人とそれ以外の50人(外国人も含む)の75人。コース上では5キロメートルごとに医療スタッフとお湯、緊急の場合に備えて救急車も配備した。その甲斐あってか、参加者は全員、完走した。

この大会を思いついたきっかけは、チャンバさんが2021年12月に、南極の氷河の上を走るマラソン大会「南極マラソン」をたまたまテレビで見たことだ。「パンゴン湖でもできる」と、パンゴン湖氷上マラソンの開催に向けて動き出した。

取り返しがつかなくなる

チャンバさんにはマラソン大会を通じて伝えたかったことがある。それは気候変動の影響で、ラダックでは飲み水や農業用水の確保が難しくなってきたことだ。

ラダックは乾燥地域。生活用水は、冬に降る雪と氷河の雪解け水に頼る。だが気温の上昇から氷河が縮小した。また夏に雪が早く溶けてしまうため、翌年の冬や春にかけて水が不足する。ラダックの春は大麦などを作付けする時期。水がないのは死活問題だ。ラダックで人気のアイスホッケーができる期間も、10年前と比べて1カ月も短くなったという。

「大会名のサブタイトルは『ザ・ラスト・ランド』。気候変動に今取り組まないと取り返しがつかなくなるという意味だ。マラソンを通じてラダックの現状を見て、気候変動を実感してほしかった」(チャンバさん)

パンゴン湖マラソンは、世界一標高の高い氷上マラソンとしてギネス世界記録に登録された。証明書を持つ左の男性がチャンバさん(写真は本人提供)

パンゴン湖マラソンは、世界一標高の高い氷上マラソンとしてギネス世界記録に登録された。証明書を持つ左の男性がチャンバさん(写真は本人提供)

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