「賄賂と殺人がはびこる学校に娘を通わせられない」、マシな教育求めコロンビアへやってきたベネズエラ難民

ジョネイリスさん(後ろ)とカミラちゃん。カミラちゃんは、お母さんのことが大好きだ(コロンビア・メデジンのエルポブラドで撮影)ジョネイリスさん(後ろ)とカミラちゃん。カミラちゃんは、お母さんのことが大好きだ(コロンビア・メデジンのエルポブラドにあるホテルで撮影)

「私が住んでいた街の大学には強盗が入った」。こう語るのは、ベネズエラ東部のシウダ・ボリーバルから2カ月前にコロンビア第2の都市メデジンへやってきたジョネイリス・ディアスさん(24)だ。ベネズエラでは学校が殺人やレイプの現場となる場合もある。5歳の娘をもつジョネイリスさんは「娘はコロンビアの幼稚園で新しい環境に慣れずに悩んでいる。でもここは治安や賄賂を理由に教育を諦める必要がない」と話す。

先生はクズだ

「夫が仕事を失い、経済的に苦しくなったことも、ベネズエラを離れた理由の一つ。でもそれよりも、子どもを最悪の環境で学ばせるわけにはいかないとの思いが強かった」(ジョネイリスさん)

ジョネイリスさんの夫はパン屋で働いていたが、ベネズエラ経済の破綻とコロナ禍の影響で材料の調達が難しくなったことから、仕事を失った。一家は、食べ物を買うお金もないほど困窮。ベネズエラを離れることを考えるようになった。

そんな家族のベネズエラ出国を後押ししたのが、娘カミラちゃんの存在だった。「先生はクズだ。ここにいては将来、殺人やレイプの危機にさらされながら学校に通うことになる。娘には安全な場所で教育を受けてほしい」。そう考えたジョネイリスさんは、カミラちゃんのためにコロンビアに避難することを決めた。2023年6月、ジョネイリスさんは、夫に1カ月遅れてメデジンへやってきた。

園児が直面する2つの試練

ジョネイリスさんは、ベネズエラの幼稚園に途中まで通ったカミラちゃんが、できる限り早く幼稚園に戻ることを希望し、近所の幼稚園に入園させた。

「年度の途中からの入園だったため断られると思ったが、校長先生が快く入園を認めてくれた。本当にラッキーだった」。公立の幼稚園であり金銭的な壁もなかった。カミラちゃんは晴れてメデジンで幼稚園に通い始めることができた。

先生がさぼらず暴力もない幼稚園に入り、コロンビアでの教育をスタートできたカミラちゃんだが、5歳の女の子にとって新しい土地での生活は試練だらけだ。

1つ目の試練は、メデジンの幼稚園のカリキュラム。ベネズエラで通っていた幼稚園では、運動やダンスなど遊びを通しての学習が主だった。だがいまの幼稚園では文字の読み書きを学ぶ。また同じスペイン語でも単語や発音の違いから、カミラちゃんにとって、コロンビアのスペイン語は聞き取りづらい。

2つ目の試練は外国人差別だ。ジョネイリスさんは「娘は指を指され、『ベネズエラ人だ』と笑われた」と肩を落とす。カミラちゃんは、その幼稚園でただ1人のベネズエラ人。コロンビア人の子どもたちにからかわれたことはショックだったという。

ただでさえ異国の地で緊張していたにもかかわらず、からかいを受け、さらに塞ぎがちになってしまったカミラちゃん。幼稚園の休み時間には、外へ遊びに行くコロンビア人の子どもたちを横目に、ひとり机に向かって母であるジョネイリスさんの絵を描いているという。

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