腐敗に翻弄され続けるベネズエラ難民、直面する「3つの不条理」とは

ベネズエラ・カラカス出身で、2018年にコロンビア・メデジンへ避難してきたルベンス・トロッティさん。現在はメデジンの自動車工場で働くベネズエラ・カラカス出身で、2018年にコロンビア・メデジンへ避難してきたルベンスさん。現在はメデジンの自動車工場で働く

ベネズエラで経済危機と政情不安が続く中、ベネズエラ人は国内外でさまざまな「腐敗」に苦しんでいる。国内で反政府的な言動をとれば、警察や政府系武装勢力の容赦ない暴力や殺害の標的となる。ベネズエラから脱出するためにパスポートを作るにも賄賂を払うケースがほとんど。隣国コロンビアへ避難し、仕事を見つけた場合も、コロンビア人に比べて不当に安い給料が払われることもざらだ。

■不条理①:警察に殺される?

「ベネズエラでは、マドゥロ政権に批判的な話をすると殺される」。こう話すのは、首都カラカス出身のベネズエラ人で、現在はコロンビア・メデジンの自動車修理工場に勤めるルベンスさんだ。

ベネズエラには、「コレクティーボ」と呼ばれる政府系の武装勢力がある。コレクティーボと警察がとりわけ脅迫のターゲットとするのは、マドゥロ政権にとって都合の悪い情報を流すジャーナリストだ。殴ったり、ときには銃で殺すこともあるという。「警察はマドゥロのサポーターだ」とルベンスさんは嘆く。

国内の治安を維持する役割をもつ警察が庶民の安全を脅かす。「ベネズエラで暴力から身を守るには、何もしないことが一番だ」とルベンスさんは語る。

■不条理②:パスポート取得=賄賂?

暴力から逃れるために国外を目指すベネズエラ人は多くいる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、国外に逃れたベネズエラ人は2019年6月7日時点で、国民の1割を超える400万人以上。うちコロンビアへの避難が約130万人を占める。

だがパスポートなど公式書類を作るのも容易ではない。パスポートを申請しても、受け取るには予測できないほど長い時間がかかるという。

その期間を短縮するのに有効なのが「賄賂」だ。ルベンスさんのケースでは、ベネズエラ政府の職員に約200万ベネズエラボリーバル(ルベンスさんによれば2万2000円程度)を払ったうえで、5カ月かけてパスポートを取得した。

だが賄賂のお金を用意できるベネズエラ人はごく少数。多くはパスポートなしで違法にコロンビアなどへ入国するのが現実だ。

コロンビア在住のベネズエラ難民のひとり、ガルシアさんは言う。「パスポートを発行するオフィスのトップは腐敗している。金額を必要以上に要求したり、政治家を優先したり、パスポート申請に必要なウェブサイトをブロックしたりさえする」

■不条理③:インテリがウェイターに

他国へ入国できたとしても、ベネズエラ難民の苦難は終わらない。生活が苦しいのはもちろん、仕事を見つけた後も「差別」が待ち受ける。

コロンビアの場合、最低月給が約82万8000ペソ(約2万8000円)だが、ベネズエラ難民が受け取る額はそれを下回るケースも少なくない。とりわけ搾取されるのは、就労が認められる滞在許可証(PEP)をもたない人たちで、月給が約60万~70万ペソ(約2万400~2万3800円)にとどまることもあるという。

「ベネズエラにいたときは技術者などとして働いていたのに、コロンビアではウェイターやレジ打ちの仕事しかできない人も多くいる。悲しいことだ。やりたい仕事をできず、コロンビア人がやりたがらない仕事をやらないといけない。だがその仕事をやらないと生きていけない」。ガルシアさんはこう心情を吐露した。

ジャネッシ・ガルシアさん。ベネズエラ・ボリーバル州のマリパ村出身。現在はメデジンで夫と2人の子どもと暮らす

ガルシアさん。ベネズエラ・ボリーバル州のマリパ村出身。現在はメデジンで夫と2人の子どもと暮らす