日本語だけではない! コロンビア・メデジンの「日本文化の発信拠点」のチャレンジは続く

メデジン日本文化センター「春のひなた」の将来の構想について語るニコラス・モレノさん。現在は1階に合気道の道場、2階に日本語教室がある。2024年はカフェレストランもオープンさせる予定メデジン日本文化センター「春のひなた」の将来の構想について語るニコラス・モレノさん。現在は1階に合気道の道場、2階に日本語教室がある。2024年はカフェレストランもオープンさせる予定

コロンビア第2の都市メデジンにある日本文化センター春のひなた」の共同代表を務めるニコラス・モレノさん(35)は「(このセンターの活動を)日本語教室だけで収めるつもりはない」と語る。春のひなたは日本語教室のほか、合気道教室、日本をテーマにしたさまざまなワークショップやイベントなどを手がける。2024年は、日本食も提供するカフェレストランも立ち上げる計画だ。

茶道が一番人気!

春のひなたの中核事業である日本語教室の生徒数は現在133人。年齢層は6〜88歳と幅広い。メデジンの私立大学・EAFIT大学で日本語教師を長年務めた羽田野香里さん(春のひなた共同代表)のノウハウを生かし、生徒のレベルに合わせた独自の教育プログラムを組んでいることが好評だという。

合気道教室の生徒数は約30人。この8割が子どもだ。合気道を教えるアンヘリカ・ヒメネスさん(春のひなた共同代表)は「合気道では、訓練を通して、自らを律する力や他人を思いやる力を養える。また自らを知ることで自己肯定感が高まり、日々の生活も充実していく。子どもたちにとっては人格形成にもつながる」と意義を語る。

ワークショップは、春のひなたの生徒とスタッフが企画・運営をする。日本に興味をもつメデジンの住民を対象に毎週土曜日に開く。なかでも人気なのは茶道教室。「お茶碗を手で回す動作ひとつとっても、日本の哲学と美意識を感じる」と語った参加者も。これまでの参加者数は延べ100人以上にのぼる。

開店に向けて準備中のカフェレストランを担当するのは、コロンビアの首都ボゴタで日本食レストランを経営していた経験をもつ古張智恵子さんだ。古張さんは春のひなたに日本語教師として勤めるかたわら、春のひなたで毎週土曜日に手作り料理を販売する。コロッケパン、たまごサンド、どら焼き、和菓子などだ。クラスを終えた生徒や迎えに来る保護者に好評で、毎回完売するという。

「日本好き」の居場所

春のひなたが目指すのは、ここに集う人たちの交流の機会を増やして相乗効果を生むこと。たとえば日本語を学ぶ生徒が合気道を習ったり、ワークショップの企画・運営を経験した生徒がボランティア精神や独立志向をもつようになったり、日本への留学や日本でスペイン語教師として働くことを現実的に考えたり――。この流れこそ、モレノさんが、春のひなたの設立当初に胸に抱いていたことだった。

交流の機会を促す役割を担うのが、春のひなたが入居するビルの1階をリニューアルし、2024年にオープン予定のカフェレストランだ。古張さんが作る日本の弁当も売っていく計画だ。

モレノさんはEAFIT大学で日本語を学んでいたとき、日本の魅力に強く惹かれた。次第に、「日本好き」をだれかと共有したり日本文化を探求したりできるコミュニティや、日本文化を通して多角的な視点を身につけるきっかけになれる場所を提供する仕事をしたい、と思うようになっていった。これを形にしたのが春のひなただ。