ブードゥー教のシェフのソヒヌーさんは占い師でもある。占い道具と一緒に撮影。8つの貝殻がついた鉄の鎖が3本と、足元に置かれた布の袋の中には動物の骨や木の実がぎっしり詰まっている。鎖を振って地面に置いたときの貝殻の表裏を見て占いをする
コーラナッツに神の力が宿る
ソヒヌーさんのもとには現在、1日30人ほどの村人が訪れる。何か問題があって祈るとき、祈りがかなったとき、良い報告があるときなどだ。
お祈りに来る人の悩みは多様だ。身体のどこかが悪い、妊娠できない、仕事が見つからない、夫・妻をもてないなど。
シェフの仕事は、村人のこうした祈りや報告を神に届けること。ブードゥー教の信仰の対象は空や水などさまざまな自然の物だが、ソヒヌーさんの一派の場合、神の力が宿ると考えるのは、ベナン北部で主に採れるコーラナッツだ。
コーラナッツとは直径3センチメートルほどの木の実で、ほんのりコーラの風味がして渋い。1880年代に誕生したコカ・コーラの原材料として当時は使われていた(いまは違う)。
一粒の値段は50CFAフラン(約10円)。粒の大きさやベナンの物価を考えると、かなり高価だ。ブードゥー教では神聖なものとして扱われ、良い報告や祈りをするときは白いコーラナッツを、呪いをかけるなど負の力を使うときはピンクのコーラナッツを使う。
儀式をするとき、ソヒヌーさんは手に取ったコーラナッツを信者のおでこに押し当て、呪文を唱える。こうしてブードゥー教の神に村人の祈りを届ける。
ソヒヌーさんがシェフとなり、一派を立ち上げて14年。彼のもとには300人近くの信者が集まる。「ブードゥーの神が自分の命を救ってくれた。自分が恩恵を受けたように、困っている人の祈りを届けていきたい」とソヒヌーさんは語る。
ちなみにソヒヌーさんはシェフをやりながら、今も木を切り続ける。家の中には年季の入ったチェーンソーがある。
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