「友人を殺したミャンマー国軍を許さない」 理想と現実の狭間で苦しむバンコク在住のミャンマー難民

ミャンマーからタイ・バンコクに逃れてきたサムサムさん22歳。現在は、タイの大学の授業にオンラインで出席するが、家にこもりがちだ

「大学の友人を撃ち殺した国軍を許さない。私たちはきっと勝つ」。そう語るタイ・バンコク在住のミャンマー人であるサムサムさん(22歳)は、2021年2月の軍事クーデター直後から国軍に抵抗して大学への登校を拒否するミャンマー・マグウェ管区出身の大学生だ。この3月、ミャンマー国軍に徴兵されることを恐れてマグウェイ管区からバンコクに逃れてきた。

 国軍から民主主義を取り戻す

「自分はシャイだ」と言い、時折恥ずかしそうに微笑むサムサムさん。彼の生活が一変したのは3年半前の2月。

軍事クーデターが起き、民主主義が突然奪われた。言論の自由がなくなり、国軍による恣意的な拘束・拷問・みかじめ料の請求が横行し、コメや石油の供給も滞った。軍政に反対してクーデターの直後から大学教師が相次いで職務をボイコットし、工科大学に通っていたサムサムさんを含む大学生の多くが自主的に大学を休んで国軍への抗議活動に参加した。国軍にお金が流れるのを防ぐため、ミャンマービール、「レッドルビー」の銘柄のたばこなどの軍関連企業の商品も買い控えるようになった。これらを「市民的不服従運動(CDM)」と呼ぶ。

国軍はCDM参加者を無差別に銃撃し、彼の大学の友人もその犠牲になった。軍事クーデターから1年経ったころにはCDMから離脱する学生も出てきたが、サムサムさんは友人を殺した国軍への憎しみから今もなお活動中だ。「国軍を許せない」。神妙な面持ちでこう繰り返す。

ユーチューブで国軍への抗議活動の動画をクリックしたり、民主派の武力組織「国民防衛隊(PDF)」の戦闘員である友人にお金や食べ物を送ったりしてミャンマーの民主化を求める仲間を応援し続けているという。「身体が丈夫だったら、僕も本当は国軍から民主主義を取り戻すためにPDFの戦闘員として戦いたい」

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