【ダカールの寺子屋①】ストリートチルドレンを保護・自立を助けるNGO、今晩もダカール市内を奔走中

ストリートチルドレンに傷の手当てをするビラージ・ピロットのスタッフ。毎週2回ダカール市内を周り、ストリートチルドレンの安否を確認する

シンナー中毒

子どもたちの出身地を聞いて私はびっくりした。ダカールや近隣のティエスだけでなく、ダカールから数時間も離れたカオラックやジガンショー、またガンビアやシエラレオネといった他国の出身者も多くいたのだ。

彼らがストリートチルドレンになる理由はさまざまだ。親から捨てられたり、家が貧しくて一緒に生活できなくなったり、コーラン学校(ダーラ)から逃げ出したり。だが全員に共通するのは貧困だ。貧しい環境から抜け出すため、仕事を求めて西アフリカ有数の都市ダカールにやってくる。

ただ簡単に仕事は見つからない。働けたとしても漁の網引きや、10リットルの飲み水のボトルを運んだりする手間仕事。しかも数時間働いても100CFAフラン(約25円)くらいにしかならないという。シエラレオネから来たひとりは「近くのレストランで掃除をしているけれど、食いつなぐので精一杯」と嘆く。

そうした苦しい生活を紛らわすのがドラッグやアルコールだ。コカインやヘロインといった高価なドラッグは手に入りづらいものの、大麻やシンナー、お酒は比較的すぐ買えるという。

今回聞き取りした高校生ぐらいの青年は質問を何度も聞き返したり、どもって言葉が出てこなかった。「彼はガンズ(シンナー)でハイになっていた」と後でリゾンが教えてくれた。

強制はしない

ストリートチルドレンの情報をすべて書き終えたところで、この夜の移動聞き取りが終わった。私たちは車に乗り込み、帰りの途についた。すると10歳くらいの少年が車の窓を叩く。シェークに何か話しかける。シェークは子どもを車に乗せ、こう言った。

「今からこの子を受け入れセンターに連れていく」

この少年はシェークに「受け入れセンターに行きたい」と告げたのだ。シェークはこう続ける。

「この子とは何度も話をしている。そして今日、自分から受け入れセンターに行きたいと言ってきた。入る準備はできている」

ビラージ・ピロットは子どもたちを無理に保護することはしない。彼らが同意して初めて次のアクションに移る。

「子どもたちは親に捨てられたり、コーラン学校の先生から体罰を受けたりしていて、大人に不信感を持っている。そんな子どもたちを強制的に保護しても、不信をあおるだけだ」(シェーク)

ビラージ・ピロットは彼らの元に何度も通い、話を聞いて関係を作り、その上で納得して受け入れセンターに来てもらう。少年が今回こう言ったのはスタッフのたゆまない努力(訪問)の成果だろう。

車はダカールを出発し、50キロメートル離れた郊外の受け入れセンターに向かった。時計の針はすでに夜の11時を回っている。少年にとって“新たな門出”だった。(敬称略。続く

物乞いをするために路上に立つタリベ(イスラム学校で学ぶ子ども)。円柱の入れ物にお金などを入れてもらう

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