ミャンマー国軍の空爆でタイに逃れた農家の女性、1年8カ月は「逃避行・不法入国・詐欺」の日々

ミャンマーで内戦に巻き込まれたラセワさん(39歳)。カヤー州での戦闘・空爆から逃げ続ける日々からタイへ脱出。滞在許可証を持たないミャンマー難民であるため、避難先のタイでは差別や搾取に苦しむことに

平和な日々が昔のように感じる

仕事を探してチェンマイでの生活を始めた。ドミトリーで共同生活しながら、月9000バーツ(約3万6000円)のレストランの仕事を5カ月続けた。その後、月1万バーツ(約4万円)で中国人家庭の家政婦に。だが雇い主の帰国が決まり、1カ月で失職。

そうした中、ドミトリーに警察の手入れが入った。近所の誰かが通報したらしい。ラセワさんは滞在許可証を持っていなかったが、外出していたため難を逃れた。

別のドミトリーに移ったが、そこにも警察がやって来た。調べられたが、ドミトリーで知り合った友人が警察を説得してくれ、運良く逮捕されなかった。

ラセワさんは今、チェンマイの中心地に近いサンサイ地区で知り合いと一緒にアパートを借り、レストランで働く。月給9000バーツ(約3万6000円)を手にするはずだったが、2カ月前から未払いが始まったという。

「タイ人のスタッフは給料をきちんともらっている。また、スタッフみんなで分けるはずのサービス料もくれない。ミャンマー人に対する差別だと思う‥‥。農業をしながら故郷の村で静かに暮らしていた時代がずいぶん昔のように感じる」。ここ4年半の激動をラセワさんはしみじみ回想する。

週末は欠かさず教会に通うラセワさん。教会や友人の助けがあったから、壮絶な苦しみを乗り越え、なんとか生きてこられたという感謝の思いが強い。「いつか安心して暮らせるようになったら、ほかの難民を助けたい」

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