石油の輸入が止まったキューバ、教育と観光に大打撃

停電で真っ暗のハバナ中心部(旧市街)。ハバナの中でも停電が最もひどいエリアだ

ベネズエラやメキシコからの石油供給を米トランプ政権が遮断したことを受け、キューバではいま、石油不足による影響が深刻だ。1リットルのガソリン価格はいまや8ドル(約1270円)。首都ハバナから現状を報告する。

学校に行けなくなった子どもたち

ハバナのガソリン価格は2月に入って毎週のように2ドル(約320円)ずつ高騰してきた。現在は8ドルで落ち着いている。キューバでは半年前もガソリン不足が顕著だったが、現在はその比ではない。

ガソリン不足はキューバ市民から移動手段を奪った。庶民の足である「マキナ」(乗り合いタクシー)の多くが路上から消えた。運良く捕まえられても運賃は高い。この結果、多くの市民が動けなくなっている。

子どもたちも学校へ通えなくなった。ハバナでは、大学がオンラインに、高校が週2日の登校にシフトした。小学校と中学校の対面授業は毎日あるものの、午前中だけ。といっても教師も学校へたどり着けないことが少なくないため、「教室に誰もいなかった」と帰ってくるケースもあるという。

こうした事態を背景にキューバでは電気自動車(EV)やEVバイクを買う市民が出始めた。中国製の安い電動スクーターが人気だ。いまや品薄になっている。

ただ石油不足は電力事情をもさらに悪化させている。ハバナの中心部でも毎日数回、電力供給がストップする。これまでも1日4時間停電していたが、いまやそれを超えるレベル。ハバナを含むキューバ全土では3月4日、大規模な停電が起きた。

この2日後の3月6日、ハバナの中心部で、電気を求めて小さなデモがあった。この日は12時間以上の停電があり、夜の9時を過ぎたころ、けたたましい物音が突如、路上で響き出した。

真っ暗闇の中、市民が一斉に鍋や家のドアを叩き、音を鳴らして抗議を始めたのだ。性別や年齢に関係なく暗闇の路上に出て踊り出す。若者が多い。鉄パイプを手に持つ青年もいた。

「キューバではどんなこともフィエスタ(祭り)にするんだ」(キューバの青年)。電気はやがて復旧し、大歓声のもと抗議は終わった。

飛行機が相次いでキャンセル

キューバの主要産業である観光への打撃も大きい。ジェット燃料をキューバで給油できないため、運航を見合わせるエアラインが相次いでいるためだ。

キューバに滞在中の観光客にとっては、帰りの便がキャンセルされたり、メキシコ経由へと便を変更したりする必要が出てきた。これからやってくる観光客も当然、激減する。

キューバに入国できたとしても街を観光するのも難しい。なぜならガソリン不足でタクシーは走っていないし、また旅行会社もツアーの催行を見合わせているからだ。

ハバナの中心部(旧市街)。米国の経済制裁を長く受けてきたキューバのハバナには昔ながらの街並みが残る。外国人観光客にとってはノスタルジーでも、キューバ市民にとっては時代に取り残された「疎外感」を覚えるかもしれない

昼のハバナ中心部(旧市街)。外国人観光客にも人気のエリアだ

ハバナ中心部の路上で遊ぶ子どもたち

ハバナ中心部の路上で勉強する女の子。ガソリン不足は市民の足を奪い、学校に行けない子どもや教師も出てきた