トルコのエルドアン大統領「若者よ、オスマン語を学べ」、高校での必修化方針に波紋

「オスマン語(旧トルコ語)を高校で必修化する」とトルコの国民教育審議会が12月4日に方針を打ち出したことを受け、国内で大きな論争を呼んでいる。アル・モニターによると、エルドアン大統領も8日、この方針に同調して「好きであれ嫌いであれ、学生はオスマン語を学ぶことになる」と発言した。

しかし、オスマン語の必修化という突然の方針に反発は大きく、国民教育審議会は6日、「オスマン語を選択科目にして、イマーム・ハティープ校(宗教指導者養成校)の学生のみ必修にする」と方針を修正した。エルドアン大統領の発言は、この方針の2日後のものだが、オスマン語をそれでも学生に学ばせようとする意思が垣間見える。

これに対してダヴトオール首相は8日、「オスマン語を学びたい学生は選択科目で学べばよく、学びたくない者は学ぶ必要はない」と発言。審議会の方針を事実上支持した。

■平均以下の学力なのに‥‥

野党の人民の民主主義党(HDP)のデミルタシュ党首は「オスマン語を必修科目にするとはナンセンスだ」と厳しくエルドアン大統領を批判する。評論家らも、教育政策の優先順位に対する政府の考え方を疑問視している。数学やトルコ語のリテラシーといった学力問題が深刻であるからだ。経済協力開発機構(OECD)が2012年に65カ国・地域を対象に実施した学習到達度調査(PISA)によると、トルコは数学的リテラシーで44位、読解力も41位と平均以下だった。それゆえに「トルコ語もまともにできないのに、オスマン語などとんでもない」との声もある。

一方で、アクデニズ大学のサヒン・フィリズ教授は、エルドアン大統領の発言は重大な転換点だと述べる。「大統領はこれまで、建国以来の世俗主義政策を批判してきた。だが、西洋化政策を推進した皇帝マフムト2世にも批判を広げた。それ以前のトルコの栄光の時代に回帰することを望んでいる。西洋化政策が、半ば強引に政策を推進する全体主義的な自身の性格と相容れないと自覚しているのだろう」

■必修化論争は以前にも

オスマン語必修化論争は今に始まったものではない。2012年12月、民族主義者行動党(MHP)のオズジャン・イェニジェリ議員がオスマン語を中学・高校で必修化すべきという法案を提出。ただこのときは第3党の一議員が出したものであったため、あまり物議を醸さなかった。

オスマン語はオスマン帝国時代(1299~1922年)に使用された言語。1928年に、トルコ建国の父とされるケマル・アタテュルクが文字改革し、トルコ語を旧来のアラビア文字からラテン文字表記に改めた。エルドアン大統領はこれまで、穏健派イスラム政党の公正発展党(AKP)を主導(トルコの法律では大統領職は党籍から離れなければならない)。2002年に政権を獲得して以来、親イスラム政策へ転換するなど動向が注目を集めていた。「オスマン語必修化」方針もその政策の一環とみられる。