参院選で目立つ反移民政策、NGO1143団体が共同声明「外国人優遇は全くのデマ」

7月20日の参院選で争点のひとつになっているのが「日本人ファースト」の是非だ。ganasは各党のマニフェストを細かくチェックし、在日外国人の受け入れ・権利についての記述を抜き出してみた。

移民の受け入れと在日外国人の権利を制限すべきと訴えているのは参政党、日本保守党、日本維新の会。外国人労働者の受け入れ数はこのままで良いとしながら、外国人への規制の厳格化を主張するのが自民党。対照的に、在日外国人の権利の保障に積極的なのは日本共産党、社民党、れいわ新選組ということがわかった。

下に各党の主張を箇条書きする。

参政党

・単純労働者の受け入れを制限する

・日本語・日本文化の理解を受け入れの要件にする

・土地購入・生活保護などの制度を厳格化する

・外国人の参政権と帰化一世の被選挙権を否定する

日本保守党

・出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正と運用を厳正化する

・(現行では500万円以上の出資と事業計画書の提出で取得が可能な)経営・管理ビザを見直し、資本金の要件を10倍に上げ、事務所や従業員雇用の条件を付ける

・(2023年に閣議決定した)「特定技能2号の(11分野への)拡大、家族 の帯同を許す」政府方針を見直しする

・健康保険法と年金法を改正する(外国人の健康保険と年金を別立てにする)

・留学生の出身国を安全保障の観点から厳選する

日本維新の会

・外国人の比率が上がらないよう受け入れ数を規制するなど人口戦略を策定する

・帰化審査を厳格化し、また取り消し制度を創設する

自民党

違法外国人(不法滞在者や不法就労者など)をゼロにする

・運転免許証の切り替え、外国人が不動産を所有することに厳格に対応する

国民民主党

・外国人が土地を取得することやスパイ活動への対策を強化する

公明党

・ルールに基づく受け入れと違反者への厳正な対応を徹底する

・社会保険料の未納を防止する

・不法滞在者をゼロにする

・外国人労働者の育成就労と人権保護をする

・日本語教育を支援する

・難民認定を迅速化する

共産党

・外国人労働者の生活と権利の向上を求めるために入管法の抜本的な改正を求める

・在留資格にかかわらず、家族帯同を認める

・安価な労働力を確保する手段としての技能実習制度を廃止する

・技能実習生の安易な受け入れ拡大に反対する

・永住外国人に地方参政権を付与する

・永住許可の取り消し制度を廃止する

・難民の受け入れ拡大と難民支援の拡充、紛争解決のための外交努力をする

社民党

・罰則規定のある差別禁止法を策定する

・移民・難民を排除せず、多文化共生社会をめざす

れいわ新選組

・外国人差別をなくす

・外国人の権利を守る法制度を整備する

・外国人技能実習制度を廃止する

・入管施設での人権侵害をなくす

立憲民主党

・「多文化共生社会基本法」を制定し、多文化共生社会を形成する

・難民などの認定と保護、出入国管理・収容制度の問題を抜本的に改善・透明化する「難民等保護法・入管法等改正法」の制定を目指す

・在留制度全般を見直すとともに、外国人一般労働者雇用制度の整備を推進する

参政党と日本保守党の主張は正しいのか

NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)は7月11日、各政党に実施した2025参議院選挙移民政策に関するアンケート結果を公表した(自民党と日本保守党は未回答)。

アンケートによると、参政党だけが反対するのが、在留外国人の公的医療アクセスへの保障、外国人人権基本法の制定、国連人権条約が定める人種差別禁止法の制定がある。同党の神谷宗幣代表はまた、参院選の選挙運動が始まった際、その第一声で「日本の賃金が低い理由は、低賃金外国人労働者の受け入れが急増したから」と主張した。

出典:内閣府の年次経済財政報告(令和4年度)

日本の賃金が低いのは外国人労働者のせいなのか。内閣府の調査をみると、日本の実質賃金は、統計を取り始めた1991年以降ほぼ横ばいだ。これに対して移民が急増したのは、内閣府ホームページによると2010年代半ば以降。因果関係はない。

出典:内閣府の年次経済財政報告(令和6年度)

参政党と日本保守党が声をそろえるのが「外国人の犯罪が増えている(日本の治安が悪化している)」ということ。これについては非営利組織の日本ファクトチェックセンター(JFC)が、警視庁の発表を根拠に「不正確」としている。

参政党はさらに、「外国人は優遇されている」と街頭演説で声高に主張する。これに対して1143のNGOは、排外主義の扇動に反対する共同声明を発表。このなかで「『外国人が優遇されている』というのは全く根拠のないデマ。医療、年金、国民健康保険、奨学金制度などで外国人が優遇されている事実はない」と説明する。

NGOは「誰もが人間としての尊厳が尊重され、差別されず、平和に生きる共生社会をつくるようともに声をあげよう」訴える。