しらけムードのベネズエラ選挙はあさって日曜日、「棄権率」は80%を超えるか

政府に批判的な声をあげる国民を弾圧する作戦「オペラシオン・トゥントゥン」を強化するマドゥロ大統領

南米ベネズエラで5月25日に、国民議会選挙、州知事選挙、州議会選挙が実施されます。注目の選挙と思いきや、国民の間ではしらけムード。理由は、ベネズエラ人の多くが口をそろえるとおり、「(独裁政権が選挙も牛耳っているので)投票してもどうせ結果は反映されないから」です。

事実上の独裁政権(チャベス、マドゥロ)が26年にわたって続くベネズエラでは過去にも数回、野党側は選挙をボイコットしてきました。理由を付けて有力候補の出馬資格がはく奪されるなど、独裁政権による野党への嫌がらせ・締め付けがひどいためです。

2024年7月28日に実施された大統領選では、野党リーダーであるマチャド氏の立候補は認められなかったものの、野党陣営は諦めず、代わりに野党統一候補としてゴンサレス氏を擁立しました。前評判はゴンサレス氏が「直前の世論調査でも支持率83%」(現職のマドゥロ氏はわずか10%)と圧倒的に優位。にもかかわらず開票結果はマドゥロ氏の勝利。野党側や国民がいくら「根拠の開示を」と訴えても、マドゥロ政権の息がかかった選挙管理委員会(CNE)は沈黙‥‥。

怒りを爆発させた国民は開票後、路上に出て大規模な抗議デモを打ちます。これをマドゥロ政権は徹底的に弾圧。SNSで政権批判をするだけでも拘束・逮捕されるため、国民は恐怖をいただき、抗議活動は萎んでいきました。

マドゥロ政権による弾圧はますます強まっています。無力の庶民までをターゲットにした強権的な弾圧作戦を「オペラシオン・トゥントゥン」(トゥントゥンとは「ノック」の意味)と呼びます。

ワッツアップやフェイスブックなどのSNSをマドゥロ政権側の人間(公務員など)がチェックし、政権を批判する投稿を上げた人を探し出し、その人の家に国家警備隊が乗り込み、拘束するのです。トゥントゥンは街中だけではなく、田舎を含むベネズエラ全土で起きています。

こうした事情もあって今回の議会選挙では「投票に行くのをやめよう」と呼びかける動きが広がっています。投票(選挙)は意味を失っているからです。そもそも投票したくても、立候補名簿に載っているのはチャビスタ(チャベス派=マドゥロ支持者)ばかり。

マチャド氏のX(ツイッター)を見ても、シモンボリーバル大学(USB)やロスアンデス大学(ULA)のキャンパスの中に「投票に行くのをやめよう。7月28日(28J=前回の大統領選が会った日)を忘れるな」といった横断幕が張られています。

1999年に大統領に就き、2013年に死去したチャベス氏(マドゥロ氏の元ボス)をマドゥロ氏が継いで12年。ベネズエラ経済は完全に崩壊し、生活苦から国民のおよそ4分の1(約789万人)が難民として国外へ逃れました。

困難が続くベネズエラで、希望のない(政権交代は起きようがない)選挙。注目すべきは「棄権率」です。ちなみに野党がボイコットした前回(2020年12月6日)の国民議会選挙の棄権率は69%(投票率31%)でした。今回は80%の大台に届くかどうか。この数字こそが、マドゥロ政権を国民が支持しているかどうかの民意を示すことになります。

ちなみに日本のメディアはベネズエラの選挙を一切取り上げません。これがベネズエラの現実です。

ベネズエラでいま起きていること。

母の日に殺されたベネズエラの男の子、「お母さんへのプレゼントを‥‥」

ベネズエラの名門大学のひとつシモンボリーバル大学(USB)の校内に吊るされた横断幕。「投票するな。28J(7月28日=昨年の大統領選の日)を忘れるな」と書かれている(マチャド氏のツイッターから引用)