「途上国への投資が感染症の脅威を減らす」、世銀調査で58%が回答

世界銀行はこのほど、感染症の世界的な流行についてどう考えるか、といった世論調査をフランス、ドイツ、日本、英国、米国の5カ国(サンプル数4000人)で6月15~24日に実施し、その結果を公表した。回答者の大半が「感染症対策が整っているとは思えない」と懸念をあらわにし、途上国への投資こそが感染症の脅威を軽減させると考えていることがわかった。

この調査で、途上国の保健分野へ投資すべきと述べたのは回答者の58%。全体の77%は、途上国の医師や看護師、診療所に投資することは自国での感染症発生を予防することに役立つ、と答えた。69%は、感染症を持ち込むリスクがあっても自国の医師や看護師が流行地域で働くことを奨励すべき、との認識を示した。

途上国のヘルスケアへの投資は世界レベルの支出削減につながると思うか、との問いに対しては、69%が「イエス」と回答。感染症を予防するほうが、パンデミック(感染症の大流行)を抑え込むより節約できるというのが理由だ。世銀の別の調査では実際、致死的な感染症が流行した場合、世界の国内総生産(GDP)の5%(3兆7000億ドル=現在のレートで約460兆円、2013年)が失われるとの試算が出ている。

調査ではまた、多くの人が、世界の保健医療の現状に大きな懸念を抱いていることが明らかになった。西アフリカを襲ったエボラ出血熱のように、感染症が今後10年以内に再び世界レベルで流行すると思うか、との質問に対して「思う」と答えた人は、「思わない」の2倍。とくに心配しているのは、ニュースをよくフォローする人や高等教育を受けた人、頻繁に旅行する人が多い。回答者の3分の1以上が、自国での伝染病の発生を予想している。

一方で、パンデミックの脅威に世界は防御態勢をもっていると考える人は少数派。日本人の回答者は71%が「備えがある」と楽観視するものの、その比率は米国では22%、英国は23%、フランスも24%にとどまった。エボラ熱のような感染症に「自国は対応できる」と信じているのは、5カ国全体では半数にも満たなかった。

エボラ出血熱の大流行はこれまで、リベリア、シエラレオネ、ギニアで合計1万1260人以上の死者を出した。15年5月にリベリアがエボラ出血熱の終息宣言を発表したが、西アフリカでは新たな症例が相次いで報告されるなど、流行はなおも続いている。

今回の調査は、世銀から依頼された国際世論調査・戦略的コンサルティング会社グリーンバーグ・クィンラン・ロズナー・リサーチ(米国ワシントンDC)がインターネット上で実施したもの。各国から600人の市民と172~200人の見識者から回答を得た。見識者とは、学士号以上の学位をもち、世界の動向を細かくフォローする人と定義している。