フィリピン小学校の意外な表彰式、「最も優しかった人」にブルーリボン

フィリピン語(タガログ語)の小テストを受ける小学2年生たち

フィリピンの小学校では毎年年度終わりの3月末に一日がかりの特別なイベントがある。「レコグニションセレモニー」という名の表彰式だ。学校ごとにやり方は異なるものの、その年に児童が達成したことや長所をみんなの前で表彰・祝福する。まさに子どもたちの個性を「認める」儀式なのだ。

セブ市の公立マボロ小学校のセレモニーでは児童全員が「最も優しかった人」「最も歌が上手だった人」「最も整理整頓ができていた人」など、何かしら優れている点を理由に、先生から青いリボンを授与される。小学2年生の授業を受け持つマリリン・ギドゥコス先生は「児童それぞれの長所を評価する良い機会になる。児童たちは褒められると喜ぶし、来年も頑張ろう、という糧になってくれていると思う」と言う。

セブ市のホテル従業員メアリー・イネソラさんもいまだに、子どものときのセレモニーをよく覚えているという。「私は成績が5位の表彰を受けたな〜」と懐かしそうに笑いながら語る。セレモニーがあったおかげで達成感を求めて頑張ることができたそうだ。

マボロ小学校は、成績の決め手となる試験が年に4回しかない。つまり悪い成績をとっても挽回することはなかなか難しい。また、4年生になる前には選抜テストがあり、そこで85点以上をとれた者のみが特進クラス(サイエンスクラス)へ進級できる制度となっている。

学歴社会のフィリピン。勉強が得意でない子どもたちも少なくない中で、何か自信を持てるものを見つけてあげることは重要だ。その後の人生をポジティブに生きていく土台の一つになるといえるかもしれない。

フィリピンは世界的にもポジティブ志向の強い国として知られている。2013年度の米国ギャラップ社の世界183カ国を対象とした調査によると、フィリピンの国民は「ポジティブな経験の指数」が世界13位(タイとインドネシアと並んでアジアトップ)に入った。日本は60位。

この指標は、調査の前日に回答者が「笑ったかどうか」「他人からリスペクトを感じる扱いを受けたかどうか」「達成感を感じたかどうか」などの感情を元に割り出したもの。

また世界保健機関(WHO)が2012年に発表した世界の自殺データによると、フィリピンの自殺率は10万人あたり2.9人(男性4.8人、女性1.2人)で世界150位。アジアで自殺率が最も低かった。

2012年の日本の自殺率は10万人あたり18.5人(男性26.9人、女性10.1人)で世界17位。トップは南米ガイアナの同44.2人(男性70.8人、女性22.1人)。日本では実にフィリピンの6倍以上もの人が年間自ら命を絶っている。