モザンビークでマンタ乱獲、中国で高まるフカヒレ需要で

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モザンビークの漁師たちはいま、争ってマンタやエイ、サメの捕獲に乗り出している。中国で需要が急増する「フカヒレ」の原材料として販売すると、大きな利益を得ることができるためだ。ガーディアンが報じた。

漁師たちは、捕獲したサメの肉は家庭で消費し、ヒレだけを中国系商店に持っていく。1キログラム当たりの販売価格は約5000メティカル(約1万4900円)。地元の漁師たちは「良い稼ぎになる仕事」と口をそろえる。彼らはフカヒレを高値で売って小金を蓄え、ココナツの葉で屋根を葺いた小屋ではなく、コンクリートの家に住むことを夢見ている。

フカヒレの原材料として捕獲対象になっているマンタやサメは、世界中のダイバーをモザンビークに引きつける貴重な観光資源だ。漁師たちは「サメやマンタの乱獲は良くないと分かっている」と顔を曇らせながらも、「他に仕事もなく、自分たちも生き延びるためには仕方がない」と複雑な心情を告白。「他に収入源があれば、これらの漁から手を引きたい」と語った。

モザンビークの沖合はダイバーのパラダイスと呼ばれ、さまざまな海洋生物が生息していることで有名だ。この貴重な天然資源がアフリカの最貧国の一つであるこの国に、世界中からダイバーや観光客を引きつけている。フカヒレ目当ての漁がさらに活発化すれば、観光産業に与える影響は無視できない。

モザンビークの女性で初めてダイビングの指導資格を取得したカルラ・ギコメさんは、「マンタと一緒に泳ぐことに憧れて、ダイバーたちはモザンビークにやってくる。マンタがいなくなったら、観光客の足は途絶えるだろう」と懸念する。

環境保護団体も、漁業よりも観光産業を優先すべきと主張。「中国系商人や一部の漁師が一時的な利益を得るよりも、貴重な野生動物を保護して観光産業を育てる方がモザンビークに長期的な経済効果を与える」と訴えているようだ。

解決策は現時点でほとんど見いだせない状況だ。政府も環境破壊につながる貴重な海産資源の枯渇に危機感を抱いているが、乏しい財源ではせいぜい数隻のボートで沿岸部を見回るくらいしかできない。さらに乱獲の背後には中国系の密輸組織が控えているとの情報もある。

マンタが泳ぐ美しい海域をめぐる「環境」と「漁師の生計」の対立は、一国の政治や経済の枠組みを超え、国際的な犯罪も絡む複雑な世界の海流に呑まれつつある。(今井ゆき)