エジプト国民は我慢するとき? モルシ大統領の解任で思う

0708エジプト写真①(辻野恭子)ラマダン(断食月)明けに食べる羊を売るエジプト人たち。羊の見張りより、水タバコに夢中。地方によっては、カイロの混乱とは関係なく、穏やかな時間が流れる

2013年7月3日(日本時間4日未明)にエジプトで始まった一連の騒動。モルシ前大統領はたった1年で解任されてしまうという結果になりました。果たして、エジプト国民は「今」動くべきだったのでしょうか。エジプト国民は本当にモルシ前大統領の解任を望んでいたのでしょうか。

私が人生2度目のエジプト滞在を始めたのは2011年1月6日からでした。ムバラク元大統領を追い出すデモが始まる約20日前のことです。青年海外協力隊員としての2年間はエジプト新政府とともにありました。選挙のたびに起こるデモ、エジプトの重要な産業である観光業が受けた大打撃、失業者の増加――。果たして、2011年1月25日に起きた出来事は“革命”だったのかという疑問を抱かざるをえない状況でした。

しかしエジプトで生活していく中で、エジプト人から語られた内容は私に違った印象を与えました。「革命といつか言えるように、今はエジプト国民が一丸となってまじめに働くべきだ」「今はデモを起こすべきではない」といった声をよく耳にしました。

特に、その当時の自宅近く(カイロから南東約400キロメートルのところにあるハルガダ)の土産物屋の店主が言った言葉が忘れられません。「エジプトが新たな一歩を踏み出し、より良い国にするためには5年、10年といった年月がかかる。僕たちは我慢しなければいけない。モルシ大統領を1年や2年で評価してはいけないと思う」。そしてさらに続けました。

「エジプトには8000万人の国民がいる。だけど、首都カイロで100万人規模のデモが起きると、エジプト国民全体がそのデモに参加しているかのように報道される。結果、観光客が戻ってこない。みんながデモに賛同している訳ではないんだ」。この店主はキリスト教徒でした。

私は、土産物屋の店主やタクシーの運転手、スーパーの店員など多くのエジプト人と話す機会に恵まれていました。彼らはいつも「今は踏ん張り時だ」と私に真剣な目で話してくれました。それはイスラム教徒、キリスト教徒問わずです。

私は彼らの真剣なまなざしにいつも圧倒されていました。きっと彼らなら本当の革命にしてくれるに違いない。そう思っていました。

今回の一連の騒動はエジプト国民全体が望んでいた結果なのでしょうか。私は疑問を抱かずにはいられません。