【セネガル協力隊がゆく(4)】15人家族の生活費は1カ月2万5000円、教育費を捻出する余裕はない

Exif_JPEG_PICTURE家計調査に同行したンジャハイ村の小学校校長が児童に薬を配布する

■年間200円が払えない

セネガルの都市と農村の小学校はどんな問題を抱えているのだろうと思って、私は2012年10~12月、青年海外協力隊として活動する「リンゲール県(セネガル北東部)教育委員会」が管轄する小学校のうち37校を対象にアンケート調査をした。今回は、そのアンケート結果、またそれを踏まえて実施した家計調査から見えたことを書いてみたい。

アンケートで尋ねたのは、学校に水や電気は通っているのか、トイレはあるのか、給食はあるのか、学校菜園はあるのか、村人・児童の親・学校関係者で構成する「学校運営委員会」(CGE)の活動はどうか、などだ。私の活動の良き協力者である中学校教師(元小学校校長)と一緒に進めた。

アンケートではっきりわかったのは、資金不足から、水道やトイレもなく、給食は提供されていないという現実だった。セネガルの学校では通常、児童の親から「分担金」を集め、それによって必要な費用をまかなう。分担金の金額や集金方法は学校によってばらばらで、1年に1回1000CFA(約200円)集める学校もあれば、毎月250CFA(約30円)の学校もある。ところが、この分担金を一部の親しか払っていないことが露呈した。

私は、分担金がなぜ払われないのかを考えた。小学校の環境を改善し、子どもたちがより良い環境で勉強するためにも親の援助は欠かせない。

そこで今度は、私の任地ダーラ(首都ダカールの北東に位置する)から約25キロメートル離れたンジャハイ村で、教育への支出額を把握しようと家計調査を実施した。

ンジャハイ村は、プルとウォロフという2つの民族が混住している。人口はわずか133人(20世帯)。水道も電気も通っていない、典型的なセネガルの畜産の村だ。

■生活の改善から

家計調査では、私とンジャハイ小学校の校長で一緒に、村人の家を訪問した。文房具や小学校の登録料、給食の食材に使われる分担金について質問した。私はウォロフ語なら話せるが、プル語は理解できないため、どちらもできる校長に協力してもらえたのは助かった。

聞き取りしたのは3世帯。いずれも、畜産と雨期の農業を生業としていた。定期的な現金収入はほとんどないという。基本的に自給自足。祭り(イスラムの宗教行事である犠牲祭、結婚式、命名式など)やお金がなくて困ったときに家畜を売り、現金を得ている。

村人に生活費を聞いて、私は衝撃を受けた。なぜなら15人家族の1カ月の生活費がたったの15万CFA(約2万5000円)だったからだ。私1人が毎月、国際協力機構(JICA)から受け取る金額(20万CFA=約3万円)より少ない。

稼いだお金は何に使っているのか、と尋ねると、3世帯とも「ほとんど食費に充てている」という。

私はこれまで、小学校でのみ活動してきた。村人とかかわる機会が圧倒的に少なかったから、村で暮らすセネガル人の生活について何も知らなかったのだ、と思い知った。

教室やトイレ、水道などを整備するには分担金は必要だ。だが村人の生活がカツカツで厳しいなかで、教育費を捻出してもらうのは現実として難しい。優先すべきは「生活の改善」だ。

私はこれから、ンジャハイ村で、学校菜園作りや環境・衛生教育の授業補佐などの活動を予定している。もっと村のことを知って、村人と一緒に収入の向上策を考えていきたい。(セネガル=藤本めぐみ)