マーケット調査会社NOPワールドによると、フィリピンの読書時間は1日あたり平均7.6時間で、インド、タイ、中国に次いで世界で4番目に長いという。果たして本当なのだろうか。フィリピン・セブでその実情に迫ってみた。
ポイント1)実際の読書時間はデータの4分の1
フィリピン大学(UP)セブ校に通う大学生9人に「1日の平均読書時間」を聞いたところ、約2時間だった。NOPが示した「7.6時間」に届いている人は皆無。また、1カ月に読む本の数は平均6冊だった。UPセブ校の学生であるレオニクレス・アラスさんは「フィリピンの読書量が世界で4位であるという事実は本当なのだろうか」と首をかしげる。
ポイント2)稼ぎの11%がスマホ代に消える
UPセブ校の学生はスマートフォンにお金と時間を割く。リケジョのハンナ・セラトさんは「スマホを1日に5、6時間使う」と言う。ハンナさんに限らず、フィリピン人の多くはスマホを肌身離さず持ち歩いている。ジープニーやタクシーの運転手は、運転しながらスマホの画面に目をやることも多々ある。
セブのホテル従業員のメリー・ルネソラさんは「1カ月1300ペソ(約3200円)をスマホ代として払っている」と話す。メリーさんの月収は1万2000ペソ(約2万9000円)。稼ぎの11%をケータイ代に費やしている計算になる。
ポイント3)「アンネの日記」が650円
セブでは本の値段も高い。貧しい人にとっては手を出しづらい商品だ。高級商業施設「アヤラモール」の中にあるナショナル・ブックストアでは「アンネの日記」が265ペソ(約650円)で売られている。フィリピンを代表するファーストフード店「ジョリビー」の人気メニュー「C3セット」(フライドチキンとスパゲティ)の値段109ペソ(約260円)と比べると、本の方が約2.5倍高い。
ポイント4)公共図書館はセブ市にひとつ
セブ市には公共図書館がひとつしかない。これは、貧しい人にとっては本にアクセスする環境さえ整っていないことを意味する。ナショナル・ブックストアで本を探していたカリーナ・ゲルナさんは「お金のある人には本屋がある。でも貧しい人にとっては図書館が必要。けれどもセブ市にはひとつしか公共の図書館がないわけだから、貧しい人が本を手に取るのは難しい」と言う。
「アンケートで調べた読書時間」「スマホに奪われる時間とお金」「本の値段」「図書館の数」の4つの観点から見たフィリピンの読書事情。フィリピン人が世界4位の読書好きとは到底いえそうもない。