音楽で稼げるまで頑張る! 夢見る31歳のベナン人は6つの仕事をかけ持ち

ジャンルを問わず楽曲提供をするダガンさんは、自身もミュージシャンとして活動する(ベナン・コトヌー)

人口およそ1000万人の西アフリカのベナン。この国で暮らすケビン・ダガンさんは、趣味の音楽で生計を立てることを夢見る31歳の男性だ。現在は6つの仕事をかけ持ちし、2017年の収入は約137万5000セーファーフラン(CFA、約27万5000円)。この4割に当たる約55万CFA(約11万円)が音楽からの稼ぎだ。ダガンさんは、自宅に音楽スタジオを作ったり、曲をダウンロードできるウェブサイトを運営したりするなどして、「音楽で食べていく夢」の実現に向けて日々奮闘している。

ダガンさんは、ベナン最大の都市コトヌー近郊のカラビ出身だ。カラビの自宅で妻と1歳の娘と暮らす。大学では広報・コミュニケーションを学び、卒業後は友人の紹介でウェブサイト向けの広告を制作する仕事を1年した。その頃から、趣味の音楽で稼ぐため、自宅に音楽スタジオを作る構想を練っていた。

行動に移したのは2012年。2階建ての自宅の1階部分に、防音設備付きの「ブライト・ムシク」という音楽スタジオを立ち上げた。スタジオでは、音楽プロデューサーとして、国内外のアーティストから送られてきた音源の確認、磨けば光る原石だと判断すれば提供した楽曲の録音、プロモーションに使う動画の編集作業をする。依頼だけでなく、自身もミュージシャンとして楽曲を手がける。

「提供する楽曲はジャンルを問わない。ゴスペルを作ったこともある。問い合わせをしてきたアーティストは主にベナン人だが、アメリカ人やフランス人もいる。今まで100曲以上を提供した」。これまでで一番大きな反響を呼んだ曲は「que veux tu?(ケ ブ トゥ)」。ユーチューブでは再生回数5000回近いという。CDも今まで2枚のリリースをプロデュースした。

2017年9月には、曲をダウンロードできるウェブサイト「My MP3 Tracks.com」を作った。リズムを作るソフトウェア「ビートメイカー」で制作した曲を1曲5万CFA(約1万円)で売る。「公用語がフランス語のベナンで、サイト名を英語にしたのは、世界的にフランス語よりも英語の方が使われているから。ウェブで発信するのに英語は必須だと考えた。My MP3 Tracks.comにはフェイスブックページもあり、フランスだけでなくアメリカやインドなどから700人近いフォローワーもいる。音楽は国境を超える」とダガンさんは語る。

現在は、音楽スタジオとウェブサイトの運営を含め6つの仕事をかけ持ちするダガンさん。2017年9月から現在まで半年の収入の4割が音楽の仕事からだ。残りの6割は、レンタカー業のほか、特技を生かして広告制作や英会話講師、作曲講座も行っている。

「常に全力で動き続けたら、趣味が仕事になるかもしれない。今は音楽の仕事だけで生活するのは厳しいけれど、来年(2019年)は音楽スタジオとウェブサイトの運営など音楽一本で生計を立てていきたい」とダガンさんは青写真を描く。