ベナンの社会派ミュージシャン カマル・ラジ氏、「この国はいまだフランスに搾取されている! 若者よ、立ち上がれ!」

ベナンで人気を博す社会派ミュージシャンのカマル・ラジ氏(ベナン・コトヌー市内でカマル氏が経営するカフェで)

パーニュは中国製だった

若者同士がつながっていくことはベナン経済の発展につながるはず、というのがカマル氏の持論。彼が理想とするベナン経済は「ナレッジエコノミー」 だ。一言でいうならば、知識を使って経済発展を目指すあり方だ。

ベナン経済の現状をみると、人々の生活が輸入に強く依存していることがわかる。2016年のベナンの輸入額は約26億3000万ドル(約2787億円)で、輸出額(約4億700万ドル=約431億円)の実に4倍以上に及ぶ。輸入品のトップ5は、コメ(約7億7300万ドル=約819億円)、精製された石油(約3億4300万ドル=約363億円)、家禽(約1億6000万ドル=約169億円)、電化製品(約9360万ドル=約99億2000万円)、車(約9310万ドル=約98億6000万円)。

最大の輸入品がコメ(タイ米が流通する)というのも驚きだが、注目すべきは、輸入先のトップはフランスではないこと。ベナンにとってダントツの輸入先は中国の約20億4000万ドル(約2162億円)。これにインド(約4億4000万ドル=約466億円)、マレーシア(約2億8500万ドル=約302億円)、フランス(約2億3600万ドル=約250億円)が続く。中国からの輸入額はフランスの約10倍だ。

ベナンの輸出品トップは綿花だ。これはつまり、ベナンの綿花が中国に運ばれ、そこで“ベナンの伝統的な生地(パーニュ)”が作られ、それがベナンに輸入されることを意味する。ベナン人が着る伝統的な服のベースとなるパーニュは中国製なのだ。こうした現実がベナンにはある。

ナレッジエコノミーでは、輸入に依存するベナンを変えるために、知識や人的ネットワークをベースに起業する若者を増やすことを目指す。「(ナレッジエコノミーの基盤となる)図書館兼サロンを作るプロジェクトをアフリカ全土に広げたい」とカマル氏は意欲を燃やす。

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