ベナンの社会派ミュージシャン カマル・ラジ氏、「この国はいまだフランスに搾取されている! 若者よ、立ち上がれ!」

カマル氏ベナンで人気を博す社会派ミュージシャンのカマル・ラジ氏(ベナン・コトヌー市内でカマル氏が経営するカフェで)

“現代のサンカラ”目指す

カマル氏が政治運動に身を投じたのは15年前。14歳の時だ。政治とは何かと漠然と考えるようになり、政治の仕組みを勉強するようになった。

一番影響を受けたのは、“アフリカのチェ・ゲバラ”と呼ばれた故トーマス・サンカラだ。トーマス・サンカラは、フランスの植民地だったオートボルタ(ボルタ川の上流地域を意味する言葉で、現在のブルキナファソを指す)の最後の首相で、ブルキナファソの初代大統領となった人だ。クーデターでブレーズ・コンパオレ氏に1987年に暗殺された(コンパオレ氏は1987〜2014年まで独裁政権を築く。現在はコートジボワールに亡命)。37歳だった。

サンカラの功績として知られるのは、女性の地位改善や識字率の向上など「革命的民主主義」を推し進めたことだ。国名を「ブルキナファソ」(現地語で、清廉潔白な人たちの国という意味)に改名したのもサンカラ。彼は、社会主義に基づく政策を実施したカリスマ的政治家だった。

サンカラの思想を受け継ぐカマル氏。彼の活動はベナン中で注目を集める。「俺たちは、本当の自由を手にするために立ち上がらなければならない。何をしても俺は絶対に警察に捕まらない。だって、俺を捕まえたら、民衆が怒って暴動が起きるから」と自信満々に語る。

輸入依存から抜け出したい

カマル氏には社会起業家としての顔もある。コトヌーの中心地でカフェレストランを経営。5月には、このすぐそばに図書館兼サロンをオープンさせる予定だ。カフェレストランと図書館兼サロンを作るこのプロジェクトを「バンブー・ヌメリク(BAMBOO NUMERIK)」と呼ぶ。「政府機関や大学が集まる、コトヌーの中心地に建てるから意味があるんだ」とカマル氏は言う。

図書館兼サロンには20台のノートパソコンを置き、誰でも自由に使えるようにする。政治や経済などの本をそろえる予定だ。文章の書き方などのワークショップも開き、専門的なことを学べる環境を作る。利用料は無料。

カフェレストランは、人と人をつなげる場の役割を果たす。飲食からの儲けは、図書館兼サロンに回す。「カフェレストランを、若者が集まって語り合い、知識を共有しあい、その延長線上で、何かが生み出されるイノベーティブな場にしたい」とカマル氏は話す。

カフェレストランと図書館兼サロンの経営にカマル氏がこだわるのには訳がある。植民地時代から根付く貧困や未開発の国といったアフリカの負のイメージを払拭し、誰もが来たがるアフリカをまずはベナンから作っていきたいからだ。「アフリカはもっと素晴らしい場所だし、たくさんの人に訪れてもらいたい」

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