貧困脱却のカギはNGOスクール、インド・プネー市だけで90校!

ドアステップスクールでの子どもたちの学習風景ドアステップスクールで学習する子どもたち(インド・プネーで撮影)

インドには公立校、私立校に加えて、NGOの運営する学校(NGOスクール)が数多くある。授業料は無料だ。このため貧しい人たちも学校に行くことができる。インド西部のプネー市だけでも、7つのNGOによる80〜90の学校(初等・中等教育)がある。プネーで暮らす建設作業員の妻、ラリータさんは「NGOスクールのおかげで家計に余裕ができたの。3人の子どものうち、上の2人には大学の学費を送り、末っ子には大学へ通うため貯金している」と言う。

インドでは以前、貧しい人が学校に行くことは難しかった。衣食住を満たすだけで精一杯。教育にお金をかける、余裕のない人が少なくなかった。加えて、「女の子は家庭を守らなければならない」という考えが根深く、教育の重要性はなかなか理解されなかった。

ところがインド政府は2016年、「女の子1人に教えれば、彼女が他の人に教育を広める!」とスローガンを掲げた。この動きも追い風になって、貧しい子どもたちをサポートする教育系NGOの活動が加速した。国内の学校に教師を派遣するNGO「Teach For India」プネー支部で働くアディティさんは「(インド政府がこのスローガンを掲げているから)私たちはその目標に向かって頑張っている。最終的にはNGOがなくてもインドの教育が回るようになれば嬉しい」と話す。

プネー市で2番目に大きい教育系NGO「ドアステップスクール」もそのひとつだ。ドアステップスクールの目玉のプロジェクトは、プネー市内に建設中の高層ビルの現場近くに教室をつくり、建設作業員の子どもたちに教育を届けること。建設現場で働く作業員はインド東部など貧しいエリアからプネーに出稼ぎに来た人が多い。このため建設作業員の子どもたちはマラティ語を話せないため、ドアステップスクールでマラティ語の読み書きを学ぶ。

建設作業員の子どもたちは、建設中のビルが完工すると、次の現場へ家族で移動する。親の仕事の都合で1カ月しかその場所に住まない子どももいるという。そのため移住先での学校探しは大変。学校から受け入れを拒否されることもある。また公立学校でも学費(0~200ルピー=0~約320円)がかかることから、子どもを学校に通わせることは経済的にも難しい。

NGOスクールではないが、プネーのスラムで学校に通えない子どもたち向けに「サポートクラス」を運営するのがNGOマシャールだ。マシャールのすごいところは、子どもを学校に行かせるよう親の説得に全力を注ぐこと。スタッフがスラムの家庭を訪れ、教育を受けるメリットを説く。

貧困から抜け出すカギとなるのは、どんな人にも教育を届けるNGOの存在だ。プネーに住むインド人の多くは口を揃えて言う。「インドではカースト制度の影響がかなり薄まりつつある。そのため教育を受ければ受けるほど良い職業につける」。インドでは急速に、国民の教育に対する意識は高まっているようだ。