親日インド人がメンバーのビジネス団体、「日本の中小企業はもっとインド市場に来て!」

インド・日本ビジネス評議会(IJBC)が主催するビジネスフェスティバル「第1回 こんにちは、プネー」のWebサイト。11月17~18日にインド・プネー市で開催する予定。インドと日本が交流してビジネスに役立てるという主旨だインド・日本ビジネス評議会(IJBC)が主催するビジネスフェスティバル「第1回 こんにちは、プネー」のWebサイト。11月17~18日にインド・プネー市で開催する予定。インドと日本が交流してビジネスに役立てるという主旨だ

世界一のスピードで少子高齢化と人口減少で日本市場が縮小していく中、「日本の中小企業はもっと、インド市場に目をむけてほしい」と力説するインド人がいる。2011年に誕生した「インド・日本ビジネス評議会(IJBC)」のシッダールタ・デシュムク副代表(44)だ。同団体はインド西部の都市プネーを拠点に、日本とインドの文化の相互理解を促し、両国間のビジネスを活性化させることを目指す。

■50年後は日本の人口が3分の2に

「日本のモノづくりには定評がある。なのに日本市場にこだわりすぎて生き残れない企業がある。とてももったいないことだ」。デシュムク氏はこう残念がる。

日本の統計局によると、日本では消費が旺盛な若者世代(15~29歳)の数は2009年時点で10年前から22%減った。50年後の2068年の日本の人口は、現在の1億2500万人から8000万人台にまで減少する。商品を作っても売れない時代が確実にやってくる。

プネーを拠点とするIT企業「SHIMBI LABS」の経営者でもあるデシュムク氏は、エンジニアとして日本で働いた経験をもつ。2000年からの2年間は、フリーランスのエンジニアとして日産自動車やNTT、複数のIT企業で“武者修行”していた。日本の製品の質が高いことや、文化に大きな違いがあるのを感じたという。

デシュムク氏は「インド人と日本人の考え方、ソフトフェアを開発するときの企業文化の違いで、何度も壁にぶつかった。でも互いに理解しあえば必ず乗り越えられるはずだ。IJBCはその橋渡しをする。そうすれば、日本企業はインド市場を開拓できるし、インドも発展できる」と、日本とインドの企業が協力するメリットを熱く語る。

■IT業界の印日文化の違いは3つ

ソフトウェア業界に身を置くデシュムク氏によると、インドと日本の企業文化の違いは3つあるという。

1つ目は、プロジェクトの進め方の違いだ。インドではソフトウェア開発を世界標準の米国企業と進めることがほとんど。世界標準ではいったん設計したものは、後で変更しないのが通常だという。ところが日本式は部分的な修正や変更が多い。「変更内容を伝えるとき、言葉の問題もあり連絡ミスや勘違いが頻繁に起きる。修正を重ねていると納期に間に合わなくなる」(デシュムク氏)

2つ目は、日本とインドで期待される「質」の違い。製品に対する日本の顧客の期待は高い。デシュムク氏によると、インドの製品の質はいまひとつだという。

3つ目は、インドでは労働組合の力が強いこと。ソニーのように、インドに進出したものの、労組とのトラブルで工場を撤退させた企業がいくつかある。インドでは大きな労組は政治勢力とつながっている。トラブルから大規模なストライキに発展した例もある。

デシュムク氏は「文化の違いを学んでおけば、トラブルを未然に防げる可能性は高い。何か起きても対策を立てられる」と言う。

■11月17日にビジネス交流

IJBCは11月17~18日、インド人と日本人が交流するビジネスフェスティバル「こんにちは、プネー」をプネー市内で開催する予定だ。今回が初めて。目的は、インド人が日本文化を理解しながらビジネス機会に出あうこと。当日参加するのは、日本やインドの企業をはじめ、学生やビジネスマン、日本に関心のあるインド人、日本語教育団体など。日本とインドの交流を目的とするワークショップや円卓会議、日本文化を体験する日本食や音楽コーナーを設ける。2日間で2000人の来場者を見込む。

「東のオックスフォード」の異名をもつプネーはインドで最も日本語を学ぶ学生が多い。外資系企業の集まる巨大なITパークもあり「東のシリコンバレー」とも呼ばれる。デシュムク氏は「親日の素地のあるプネーから、日本とインドの連携をもっと強めていきたい」と意気込む。

IJBCはこれまで、両国の学生やビジネスパーソンが互いの国について学ぶスタディツアーを実施したり、インドの写真展を日本の全国各地で開いたりしてきた。両国の中小企業向けのコンサルティングやトラブル対応、社員研修なども請け負う。これまでに、ブリジストンのタイヤ工場、医療機器メーカー・ニプロの工場をプネーに誘致した実績をもつ。

インド・日本ビジネス評議会(IJBC)のシッダールタ・デシュムク副代表。自身が経営するIT企業の顧客は、多くが日本企業。頻繁にインドと日本を行き来する

インド・日本ビジネス評議会(IJBC)のシッダールタ・デシュムク副代表。自身が経営するIT企業の顧客は、多くが日本企業。頻繁にインドと日本を行き来する