インド人は神を冒涜? 「青い肌のガネーシャ」からなんでもありのヒンドゥー教を考えてみた

ガネーシャ祭りでは、一家にひとつガネーシャ像を買うのが習慣だ。中央が青い肌のガネーシャ。右下はスワミという僧の座り方をするガネーシャガネーシャ祭りでは、一家にひとつガネーシャ像を買うのが習慣だ。中央が青い肌のガネーシャ。右下はスワミという僧の座り方をするガネーシャ

ヒンドゥー教といえば神が多いことで有名だ。そのなかでも日本人にとって馴染み深いのはおそらく、象の頭をした神様「ガネーシャ」だろう。そのガネーシャの生誕を祝う祭りは毎年8月の終わりから9月の中旬にかけてインド各地で開かれる。その時期はガネーシャ像の特設売り場がいたるところにできる。

ひな壇のような台の上に、色とりどりのガネーシャ像がずらりと並ぶ。そのなかでひとつだけ「青い肌のガネーシャ」を見たことがある。インドで肌の青い神様といえばビシュヌかシバ。ガネーシャの肌がなぜ青いのか、とインド人に聞くと「シバとガネーシャがミックスした像だよ」。

神様をミックス。その発想に私は驚いた。だがもっと驚いたのは、シバはガネーシャの父なので、いわば父と子をミックスさせたことだ。父なのか、子なのか‥‥。

ミックスのガネーシャはほかにもいる。髪の毛が生えたガネーシャはクリシュナとのミックスだし、スワミという僧の神の座り方をするガネーシャもいる。インド人いわく「ヒンドゥー教はなんでもあり。クレイジーだね」。

といってもインド人は神を愚弄しているわけではない。像の姿かたちをどれだけユニークにするかというのは職人のクリエイティビティの見せどころ。また商品としても、ほかのガネーシャとの差別化につながる。神様を堂々と商品にして売ることにも驚きだが。

日本と比べて、インドの神様は驚くほど身近な存在だ。ほとんどの人が神を信じ、車にも、家にも神様の像や絵を飾る。ヒンドゥー寺院にも週に2、3回は行く人がほとんど。美少年の神として人気の高いクリシュナはアニメ化され、テレビで放送されている。

インドの文化は、一言でいえば「なんでもあり」だ。新しいこと、異なるものにもオープンで、すぐに自分たちの文化に取り込み、消化する。国民的飲み物であるチャイも、もともとは植民地時代にイギリスが持ち込み、栽培した茶葉から広まった。スパイスとミルクでアレンジされたチャイは、今ではインド人の生活に欠かせない。

日本の国土のおよそ9倍という広大な土地に13億人以上が暮らすインド。そこにはさまざまな宗教、民族、言語が存在する。インドとしてひとつに束ねるには、しきたりにこだわらない“なんでもありの精神”が必要なのかもしれない。