最新のデザインもお任せあれ! ベナンでオーダーメイド服が人気な理由

“アフリカのベネチア”と呼ばれるガンビエでテーラーを営むセラ・メソーさん。モデルが着るようなドレスから子ども服まで幅広く手がける(ベナン・ガンビエで撮影) “アフリカのベネチア”と呼ばれるガンビエでテーラーを営むセラ・メソーさん。モデルが着るようなドレスから子ども服まで幅広く手がける(ベナン・ガンビエで撮影)

西アフリカ・ベナンの女性はオーダーメイドのドレスが大好きだ。“アフリカのベネチア”と呼ばれる水上都市ガンビエで仕立屋(テーラー)を営むセラ・メソーさん(38)はパーティードレスもつくる。「最新のファッションのデザインは難しいけれど、つくれるように、ガンビエのテーラー仲間50人が集まる勉強会への参加も欠かさない」。スキルアップは確実に収入増につながっている。

メソーさんの顧客は注文する際、店(自宅)に張ってあるポスターやインターネット上の写真から好きなデザインを選んだり、見本となるドレスを持参したり、ときには口頭の説明だけで、自分が仕立てたい服のイメージを伝える。「私がテーラーを始めた5年前と比べて、ネットのデザインからオーダーする人が増えた。それが理由で、デザインのバラエティーも増えたと思う。これまでは巻きスカートとか、Tシャツとか、簡単なものばかりだったけれど、最近はおしゃれで難しいデザインも多いのよ」とメソーさんは語る。

「お客さんの注文は絶対に断らない。難しいデザインには時間はかかってしまう。でも、なんとかしてやり遂げる」。仕立てで一番難しいプロセスは布を裁断するところ。子ども服をつくるときや、パーティードレスのような複雑な形に切るときは、全神経を集中させるという。

最新の難しいデザインに対応できるように、メソーさんはテーラーの勉強会に定期的に参加する。「布の切り方や縫い方などを月に2回、ガンビエで1番のベテランテーラーから教わっている。それに、月に1回はコトヌー(ベナン最大都市)から先生を呼んで、レッスンを受けるのよ」。さまざまなオーダーを実現する彼女の高いスキルは、売り上げ増加につながった。

テーラーの繁忙期は9~1月。女性たちが新年に向けて新しい服を仕立てるためだ。繁忙期は毎日6~7着の注文を受ける。服の仕立て代は、「ボンバ」といわれる伝統的な上下セットで500セファ(CFA)フラン(約100円)、複雑なデザインのドレスなら7000CFAフラン(約1400円)ほど。これとは別に、布代が5メートルで6000~8000CFAフラン(約1200~1600円)かかる。5メートルあれば、スカート、シャツ、パンツの3つを仕立てられる。

2~3月は新年の買い込み需要のあとのため、テーラーにとっては閑散期だ。この時期は1日1つも注文をとれないこともある。「仕事が1週間まったくないこともざら。冠婚葬祭で着る服のオーダーが大事な収入源。お葬式のためのオーダーは月に2回くらいあるから助かる」とメソーさんは語る。

Tシャツやジーンズ、ミニスカートなどの既製服も着られるようになった今でも、ベナン人の生活にパーニュ(西アフリカの伝統布)のオーダーメイド服は欠かせない。オーダーメイド服はスーツ替わりになったり、ミサなど宗教のイベントに行くときの正装になったりする。フォーマルな服として着られているのだ。

「パーニュだけでなくデニム生地の服のオーダーを受けたり、新しいデザインに挑戦したり、お客さんのニーズに応え続けたい」と意気込むメソーさん。既製服がアパレル市場にますます入り込んでくるなか、売り上げをキープするのに必死だ。

パーニュ(西アフリカの伝統布)でつくったドレス。若い女性の間ではボディーラインが見えるデザインが人気だ

パーニュ(西アフリカの伝統布)でつくったドレス。若い女性の間ではボディーラインが見えるデザインが人気だ

伝統的な上下セットのボンバ。スカートは巻きスカートになってることも多い。マタニティ服としても着られる

伝統的な上下セットのボンバ。スカートは巻きスカートになってることも多い。マタニティ服としても着られる