義足になったカンボジア人の収入源は義足? 地雷被害者の生き方を考える

カンボジア・シェムリアップのリハビリセンターで義足を作るキム・エアンさん。後ろは工房カンボジア・シェムリアップのリハビリセンターで義足を作るキム・エアンさん。工房で撮影

カンボジア・シェムリアップにある「フィジカル・リハビリテーション・センター」(リハビリセンター)で義足を黙々と作る男性がいる。キム・エアンさん、62歳。一見すると健常者だが、ズボンをたくし上げると、右足は義足だ。エアンさんは皮肉なことに、義足づくりのおかげで“まっとうな生活”を送ることができている。

エアンさんが地雷を踏み、足を失ったのは、カンボジア国軍の兵士だった1993年、37歳のとき。山中に逃げ込んだポル・ポト派の残党と戦っている最中のことだった。現在勤務するリハビリセンターに運び込まれ、義足を作ってもらった。1年ほどリハビリして過ごしたという。

義足を付けたエアンさんは、タイの建設現場へ出稼ぎに行く。だが危険な仕事であるうえに、日当もたったの5ドル(現在のレートで約560円)程度と少なかった。生活は困窮していた。

運が良いことにエアンさんは2005年、シェムリアップのリハビリセンターで義足を作る仕事にありつけた。現在の月収は約250ドル(約2万8000円)。転職の理由は「給料。地雷被害者を助けたいという思いは薄かった」。このリハビリセンターにやってくる人の約半数は地雷被害者だ。エアンさんは多いときは1カ月に80個の義足を作る。

エアンさんの現在の悩みは、11歳の娘と2歳半の息子の学費を将来どうまかなうかということ。「自分は学歴がなくて苦労した。子どもが勉強し続けられるよう、給料がもっと良い仕事を探している」。ただエアンさんは高い教育を受けていないため、難しいのが実情だ。

地雷で足を失った人が地雷で食っていく。エアンさんの人生は皮肉なことに、良くも悪くも、地雷という負のループに巻き込まれている。「ほかに良い仕事がないから仕方なく続けている。でも前の仕事に比べれば満足」。こう淡々と語るエアンさんがこの地雷ループから抜け出せる日はいつかやって来るのだろうか。