途上国にもワクチンを! アフリカの新型コロナ死者数6割を占める南アから訴え

南アに到着したCOVAX(途上国向けのワクチンを各国が共同で調達する国際的な枠組み)の支援による新型コロナワクチン。南アのワクチン接種率は8月15日時点で1回目のみが12.5%、2回目完了が6.9%(写真は、南ア政府のフェイスブックページより引用)南アに到着したCOVAX(途上国向けのワクチンを各国が共同で調達する国際的な枠組み)の支援による新型コロナワクチン。南アのワクチン接種率は8月15日時点で1回目のみが12.5%、2回目完了が6.9%(写真は、南ア政府のフェイスブックページより引用)

HIV陽性者は死亡リスクが30%高い

アフリカで感染拡大がとくに深刻なのが南アだ。2020年1月からの累計で、南アがあるサブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカの感染者と死者はそれぞれ500万人、12万人以上。感染者の49%、死者の61%を南アが占める。8月13日時点で感染者は258万8511人、死者は7万6247人だ。

セユームさんによると、南アで新型コロナの感染が広がる理由は3つある。

1つは、新型コロナが流行るタイミングの悪さだ。南半球にある南アでは、第1波と第3波の季節は冬。寒さが厳しいと建物の窓は閉め切るので、頻繁に換気しない。これが感染拡大を招くという。

2つめは、国民の平均年齢の高さだ。セユームさんによると、南ア国民の平均年齢は28歳。だがアフリカの多くの国・地域の平均年齢は19.5歳。セユームさんは「年齢が高いほど新型コロナにかかりやすい。重症化もしやすい」と話す。

3つめは、HIV陽性者の多さだ。国連合同エイズ計画(UNAIDS)の2020年のデータだと、南ア国内のHIV陽性者の数は780万人にものぼる。

これについてセユームさんは、世界保健機関(WHO)が8月5日に出した新たな報告書を示す。「HIV陽性者が新型コロナで入院すると、重症化して死亡するリスクが30%高い」と明らかになったのだ。セユームさんは「第1波の時は、新型コロナとエイズの関係を疑う人も少なくなかった。やっと研究結果が出た」と語る。

人口はアフリカの5%なのに

南アはナイジェリア、ケニアに続くアフリカ第3の経済大国。アフリカの他の国・地域からは、「南アでは抗体検査がたくさんできる。単純に、(感染者や死者の)人数が多く出るだけ」という指摘もよく受けるという。

だが南アの人口がアフリカで特別に多いわけではない。セユームさんによれば、南アの人口は約5900万人と日本の半分程度。アフリカ全体の人口は約13億人なので、その比率はたった5%に過ぎない。

セユームさんは「(南アは)アフリカの人口の5%しか住んでいない国なのに、死者の割合は一番高い。直面する現実が恐ろしすぎる」と危機感を示す。

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