【キベラスラムで闘う人たち②】地域の力ではしかとポリオがゼロに、その裏にヘルスボランティア!

ケニア・ナイロビのキベラスラムで活動するコミュニティ・ヘルス・ボランティア(CHV)のアウマさん(左)とアキニさん(右)ケニア・ナイロビのキベラスラムで活動するコミュニティ・ヘルス・ボランティア(CHV)のアウマさん(左)とアキニさん(右)

ケニア・ナイロビのキベラスラムにあるラインサバ区マシモニ。ここで住民の健康を守るのがコミュニティ・ヘルス・ボランティア(CHV)と呼ばれる人たちだ。CHVはコミュニティストラテジーという手法を使って、病院からおりてくる医療情報を住民に伝え、病気を予防する。マシモニCHVのリーダー、ネルソン・オチエンさんは「マシモニでは近年、はしかとポリオは発生していない」と胸を張る。(前回はこちら

母子検診は4回以上

コミュニティストラテジーとは、地域ごとに住民の健康を管理する手法。CHVは約5700人が住むマシモニを4つのゾーンに分け、各ゾーンをCHV10~15人で担当する。1人当たり100~200人の住民が割り振られる計算だ。

スラムでは入り組んだ場所に多くの人が密集して暮らす。また住民の出入りも激しい。CHVは定期的に担当の地域を巡回し、誰がどこに住んでいるかを把握する。

コミュニティストラテジーを使って伝える情報のひとつが、HIVの母子感染についてだ。

ケニアのHIVの陽性率は4.8%と世界で14番目に高い。もし妊婦が陽性と知らずに出産した場合、子どもに感染する恐れがある。CHVは、妊婦に対して母子検診でHIVテストの受診を勧める。HIVの陽性を恐れ、テストを受けたがらない妊婦には「HIVは薬でコントロールできる」「母子感染も薬で防ぐことができる」と妊婦を説得するのだ。

マシモニのCHV、ローズ・アウマさんは「今ではマシモニのすべての妊婦が出産前、4回以上検診に行くようになった」と語る。

HIVから仕事に復帰

「誰が高血圧で注意が必要なのかはすべて把握している」。アウマさんがこう語るように、住民の健康をモニタリングするのもCHVの仕事だ。

CHVは住民とコミュニケーションをとり、健康状態をくまなくチェック。住民の名前、年齢、性別、症状といったを情報を「レファレンスフォーム」と呼ばれるノートに書きこむ。新しく来た住民のところにもいち早く訪問し、リファレンスフォームをアップデートする。

このモニタリングのおかげで生活が大きく変わったのが、マシモニに住むグレース・アキニさんだ。アキニさんは高齢の未亡人。HIVの陽性者だ。彼女は長い間、エイズに苦しんでいた。

アウマさんは2012年、症状が年々悪化していくアキニさんに抗レトロウイルス薬(ARV)を服用するよう勧めた。薬でウイルスの活動を抑え込めること、ただ副作用が出て疲れやすくなること、薬は無料なこと――などを丁寧に説明した。アキニさんはアウマさんの説得に応じて、ARVをのむように。以来、体調は回復した。

「アウマさんはARVの長所も短所も説明してくれた。だから薬をのむことにした。今では洗濯の仕事もできるようになった」とアキニさんは話す。

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