途上国の障害児はなぜ学校に通えないのか、障害のせい? 社会のせい?

畠山氏が理事を務める教育NGOサルタックのローカルスタッフが、ネパール・カトマンズ近郊のラリトプルにある小学校で絵本を読み聞かせしているところ(記事とは関係ありません)

第2は、交通インフラを障害者も利用しやすいかたちに変えること。途上国で暮らす障害児にとって通学は鬼門だ。

とりわけ厳しいのが都市。道に突如、穴があったりするだけでなく、車の交通量も多い。途上国では歩行者が優先されることもない。

畠山氏によると、登下校で問題が比較的少ないのは農村。車の交通量が少ないことに加え、周りのサポートもあるからだ。「農村は、地域の支えがある。障害児を学校に連れて行ってくれる人もいる。人間関係が希薄な都会ではそういったサポートも受けにくい」と畠山氏は言う。

第3は、親や地域住民が障害児にもつ偏見をなくすことだ。その背景には宗教が絡んでいることもある。

「イスラム教では、障害は家族に対する神の罰だ、と考える。そのため親は恥ずかしがって障害児を隠し、子どもを家から一歩も出さない親もいる。国連スタッフなどが家計調査で家を訪問したときも、本当は6人家族なのに5人家族だ、と申告することもある」(畠山氏)

こうした偏見をなくすには、地域のリーダーや宗教指導者に「障害は恥ではない」とわかってもらうことが一番の近道だと畠山氏は言う。親が障害は恥ではないと思っていても、周りの理解がなければ、障害児をもつ一家は結局、地域のなかで攻撃を受けてしまう。そうなると生きていけない。

ただ一方で、宗教が障害児教育を支えてきた側面もある。キリスト教の教会が運営する学校は、公教育として障害児教育が組み込まれるようになる前から、障害児を受け入れていた。

このほか、途上国の政府が作る教育計画や障害児教育の国家プロジェクトが動いていないという問題もある。

ガーナ政府は2012年、「国家教育戦略計画2010-2020」を策定。このなかで、障害児教育を実現するために9つの戦略と13の指標を設定した。

13の指標の7つ目には「障害児が、ICT(情報通信技術)などを使った学習教材に適切にアクセスできているか」という項目がある。これについて畠山氏は「指標なのに数値目標が入っていない。おそらく障害児教育の専門家が書いていないのだろう。実現性がない」と問題視する。

一部の間では、障害児の就学率を上げるためには国が豊かになればいいと考える向きもある。だが畠山氏によると、障害児の就学を妨げる要因に、家庭の貧困は意外にも関係がない国もあるという。富裕層でも貧困層でも障害児はほぼ同じ割合で学校に行けていない。「単純な貧困削減だけでは問題解決につながらない国がある」と畠山氏は指摘する。

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