【yahman!ジャマイカ協力隊(13)】私の肌は何色なの? 日焼けすると“女の価値”は下がる

0923ジャマイカ、ナンパジャマイカ人にナンパされている筆者(左)。「どうしてジャマイカ人男性を恋人にしないのか」と質問攻めにあっている

「おはよう、ブラウニー!」

いつからだろう、私に対するジャマイカ人の呼び方が変わったのは。海岸沿いの道を歩いて出勤する朝、すれ違うジャマイカ人は陽気に、「ブラウニー」と私に声をかけてくる。私は笑顔で「おはよう」と返しながら、心の中では、なんでブラウニーになったのかな、と考える。

ブラウニーといってももちろん、チョコレートの焼き菓子のことではない。ここジャマイカでは“茶色い肌の人”をこう呼ぶ。茶色い肌の人とは、主に黒人と白人の血が混じった人のことだ。典型的なジャマイカ人よりメラニン色素が薄いブラウニーは、男女ともに異性からの人気が抜群に高い。

私は純日本人だが、ジャマイカ生活が長くなるにつれて、白かった肌が日に焼けてきた。ジャマイカにやってきた1年半前は「ホワイティー」と呼ばれていた。ホワイティーは、ジャマイカ人が白人(アジア人を含むことも)を指す言葉だ。

ジャマイカ人は肌の色に敏感だ。肌を脱色するクリーム(美白ではない)を用いるほど、ブラウニーになりたがるし、ブラウンの子どもを欲しがる。そのことを特に実感した出来事に私はこないだ遭遇した。

■日本の友人はモテモテ

9月の初め、20代女性の友人が日本からジャマイカに遊びにやって来た。オフィスで1日中働く彼女の肌は透き通るように真っ白。私もジャマイカに来る前はこうだったのだなと思い出す。

私が暮らすジャマイカ東部の街ポートアントニオを彼女と一緒に歩くと、ほぼすべてのジャマイカ人男性が友人の姿を振り返った。アジア人だというだけでも目立つのに、横を歩く私の肌が茶色いから、彼女の肌の白さが際立っていたのだろう。

私たちはある夜、私のジャマイカ人の友人(20代男性)と、ポートアントニオにあるバーで飲んでいた。すると、ジャマイカ人の友人宛てに「彼女と会う約束をしたい」「彼女と結婚したい」というメールが立て続けに届いた。彼女とは、日本人の友人のこと。顔を知らないジャマイカ人男性がたまたま、私たち3人が一緒のところを見かけ、ナンパメールを送ってきたのだ。

だがこんなのはまだ序の口のほう。別の日にファストフード店に行くと、私がトイレに立ったすきに、男性の店員が携帯電話の番号とフェイスブックのアカウント名を書いたメモを友人に渡していた。

さらに、乗合タクシーの中で会っただけのジャマイカ人ホテルマンは、友人の滞在中、私の携帯電話に何度も電話をかけてきた。「君の友人と話したい。電話を代わってほしい」。私が、彼女は1週間の休暇で日本にもうすぐ帰ると伝えても「日本の携帯電話の番号を教えてほしい。電話するから」と食い下がっていた。

■白い肌に群がる男たち

正直なところ、私はおもしろくない。ジャマイカに来て1年半、私は毎日毎日、執拗なナンパ攻撃に悩まされ続けてきた。「愛している」「きれだね」「美しい」「セクシー」「かわいい」「君の家に行きたい」「君と結婚したい」――。なのに今回は、私の友人ばかりがモテていたのだ。だがどうしてジャマイカ人は“心変わり”してしまったのだろうか。

考えてみれば、最近は、気分が悪くなるようなナンパ攻撃を受ける回数が以前に比べてめっきり減った。生活者としてこの街に受け入れられ、ナンパの対象ではなくなったという理由もある。でもそれだけではないように思える。

私の意見はこうだ。もし私が、私のことを誰も知らないモンテゴベイなどの観光地へ行けば、執拗なナンパ攻撃を受ける気がする。ブラウニーになったからといって、私の肌の色がジャマイカ人と同列になることはない。

ところがホワイティーと呼ばれるような日本人と一緒にいると、私の肌は相対的に黒くなる。ジャマイカ人にとっては、ブラウニーよりホワイティーの方が魅力的だから、白い方に男が群がるのだ。

ジャマイカ人にとってみれば、肌の色は少しでも白いほうが良いのだろう。縮れた地毛を隠す、大小さまざまな付け毛やかつらをつけることが一般的なおしゃれとして流行っていることからも、白人文化への憧れが垣間見える。一連の出来事を見るにつけ、ジャマイカ人の肌に対するコンプレックスは永遠に解決しないのかなと思った。(原彩子)