「大相撲の国際化」が終わる日は近い? 元横綱・白鵬の引退をモンゴル人目線で考えてみた

2010年11月の大相撲・九州場所(福岡)の開会式で土俵にあがった元横綱・白鵬(J. Henning Buchholz / Shutterstock.com)2010年11月の大相撲・九州場所(福岡)の開会式で土俵にあがった元横綱・白鵬(J. Henning Buchholz / Shutterstock.com)

柔道とは違う!

モンゴル勢だけが外国人力士ではない。先陣を切ったのは高見山や小錦、曙(あけぼの)、武蔵丸など米国ハワイ出身の力士だ。身長は2メートル超え、髪はまげを結いにくい縮れ毛など、日本人とは違う外見や体格だったものの、白鵬ほどの批判はなかった。

「ハワイ勢の受け入れがピークだった1990年代は、日本が何かと国際化を推奨した時代。当時の大相撲ファンは、『日本の国技』と主張するより『今は国際化の流れだから』とエンターテイメントとして楽しんだのかもしれない」(ブレンサイン氏)

相撲と同じ日本発祥の競技の柔道が、国際化をリードしたことも大きい。柔道は、男子が1964年の東京大会、女子が1992年のバルセロナ大会からオリンピック(五輪)の正式種目になったからだ。2021年の東京大会には、129カ国・地域(難民選手団を含む)から選手が参加した。

柔道を引き合いにブレンサイン氏はこう指摘する。

「もし90年代の相撲界が、柔道と同じオリンピック種目にする狙いで大相撲の国際化を進めたのなら、いつか限界が来るものだったと反省すべき。相撲の場合、国際化に走れば走るほど、国技へのこだわりをなくすための妥協が必要。まげやまわしをなくすレベルまでいくと、原型が消えてしまう」

若手の外国人はほぼいない

ブレンサイン氏は「外国人、日本人と強い力士が交互に出てくることが理想だ」と話す。ところが実際は、ハワイ勢、モンゴル勢と立て続けに強い外国人力士が出てきたことで、日本人力士は刺激を受けて強くなるどころか、逆に萎えてしまったという。

「久々の日本人横綱だった稀勢の里は長続きしなかった。横綱に昇進した2017年ごろのライバルは、白鵬に日馬富士、鶴竜とモンゴル人横綱ばかり。かわいそうに思ったほど」(ブレンサイン氏)

現役のモンゴル人力士は、日本相撲協会によると19人(2021年11月24日時点)。横綱・照ノ富士を筆頭に幕内41人中6人、十両28人中4人、幕下121人中7人、三段目202人中2人を占める。

モンゴル人以外の外国人力士は全員で7人いる。ブルガリア、ジョージア、ブラジル、ロシア、ウクライナ、カザフスタン、フィリピンから1人ずつだ。

だが相撲界ではいま、新たな外国人力士の獲得は減少傾向にある。日本相撲協会によれば、幕下より下の三段目と序二段の外国人力士はそれぞれ202人中3人、206人中1人。一番下の序の口にいたっては39人全員が日本人だ。

2009年1月の大相撲・初場所(東京)に登場した大相撲の力士たち(J. Henning Buchholz / Shutterstock.com)

2009年1月の大相撲・初場所(東京)に登場した大相撲の力士たち(J. Henning Buchholz / Shutterstock.com)

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