フィリピンで活躍する日本人コメディアンがいた! 日本のイメージを笑いに変える

1230ハポン3p1ネタを終えて、エンディング写真を撮るコメディアンたち(マニラ首都圏にある劇場Teatrinoで撮影)

フィリピン・マニラで活躍する日本人のコメディアンがいる。吉本興業所属のYUKIこと堀越祐樹さんだ。堀越さんが得意とするのは、絵を描いたフリップを見せながら話す芸。「目が細い」「がに股」など、フィリピン人が日本人にもつステレオタイプのイメージを生かしたタガログ語のネタで観客の心をつかむ。

フリップ芸のパイオニア

堀越さんのネタは、たとえばこんなふうだ。「フィリピンと日本にはいろいろな違いがある。たとえばご飯を入れるのは、フィリピンではお皿、日本では茶碗。車のハンドルは、フィリピンでは左、日本では右。そしてズボン。フィリピンではまっすぐだが、日本では『がに股』になっている(フィリピンでは日本人はがに股だというイメージがある)」。そしてがに股のズボンの絵を見せる。

このネタが生まれたきっかけは、フィリピン人が日本人に対してがに股のイメージをもっていると気づいたことだ。「戦時中、日本の軍人がえらそうな歩き方をしていたのが今でも影響しているようだ。サカン(タガログ語でがに股という意味)という言葉はとてもウケる」(堀越さん)

絵を描いたフリップを見せる芸は、堀越さんの十八番。「絵があればタガログ語の発音が多少悪くても伝わる。フィリピンに来たばかりのころは、セリフを忘れないよう、フリップの裏に書いていた」と笑う。

知り合いのフィリピン人コメディアンが、自分もフリップ芸をさせてほしいと許可をもらいに来たこともある。「もちろんOKした。日本ではよくある芸だけど、ここでは僕がパイオニアみたいになっている」(堀越さん)

唯一の外国人メンバー

堀越さんが所属するのは、スタンダップコメディアンのグループである「コメディーマニラ」だ。メンバーは70人以上。外国人は堀越さんだけだ。グループの中には、訓練生である「オープンマイカー」から、上位7人が入れる「ヘッドライナー」までランクがある。ランクによって、出られるイベントや持ち時間、ギャラの有無などが違う。堀越さんは「ヘッドライナー」とその下の「ヒューチャーコメディアン」を行き来する。

コロナがまん延する前の主な舞台は、マニラ首都圏とその近郊にあるレストランやバーだった。フィリピンにはコメディー専用の劇場はない。コメディアンだけでショーをするときもあれば、ロックバンドと一緒になるときもある。堀越さんは「週3~4回はお客さんの前でネタをしていた。週に1本は必ず新しいネタを作っていた」と言う。

現在はオンライン配信に力を入れる。月に2回ほど、コメディーマニラのメンバーとともにズームでイベントを開く。チケットは500~600ペソ(1120~1350円)。視聴者は多いときで900人に上る。「オンラインだと海外にいるフィリピン人にも見てもらえる。でもやっぱりお客さんの前でやるのが一番楽しい」(堀越さん)

コメディーの仕事のかたわら、「フィリピンまるごと四コマ漫画」という本も出した。フィリピンに住む日本人向けの情報誌「プレコム」に連載した4コマ漫画の中から100本ほどを選び、フィリピンになじみのない人向けに解説を加えた。ネットショップサイトのBASEで売る。本の売り上げはすべて、フィリピンで闘病生活を送るプレコムの社長に寄付するという。

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