上海の厳しいロックダウンで「助け合い精神」が復活!? 黒酢の貸し借りも

おすそ分けのお返しに、隣人の子どもが中華風クレープを焼いてくれた。クレープだけでなく、作っている最中の写真もWeChatに届き、松村さんもほっこりおすそ分けのお返しに、隣人の子どもが中華風クレープを焼いてくれた。クレープだけでなく、作っている最中の写真もWeChatに届き、松村さんもほっこり

ゼロコロナ(新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める)を掲げる中国政府の方針のもと、上海でロックダウン(中国語で「封城」)が始まって1カ月超。日本の報道では、食料不足をめぐる混乱といった悲惨さばかりが取り上げられているが、実際は意外にも「プラスの一面」もあるようだ。上海在住22年で、コチコンサルティング(上海)の副社長を務める松村扶美さんは「ロックダウンのおかげで近所同士が家族のように助け合うようになった。これまではなかったこと」と語る。

食料はマンションごとに共同購入

3月26日に始まった上海市の厳重なロックダウンのなか、市民の生活を支えているのは「わずかな政府の配給」と「マンション単位の共同購入」だ。2020年1月23日~4月8日の武漢でのロックダウンと違い、新型コロナの感染を徹底的に封じ込めるため上海では個人向けの宅配が禁じられたからだ。

政府の配給では、なぜかあり余るほどのキュウリとニンジンが届いた。松村さんは「我が家では1人1日1本のキュウリの消費がノルマに。デザートがわりにそのままポリポリ食べた。だけどニンジンのレシピはそんなにないでしょ。SNSでニンジンの食べ方をシェアしあったりしても、ニンジンをあまり生で食べない中国人は消費に苦労しているようだった」と話す。巷では「(ニンジンの食べ過ぎで、ウサギみたいに)耳が大きくなった」といったジョークがはやったという。

政府の配給とは異なり、共同購入では建前上、肉や野菜、コメ、水など必要な食料は買える。ただ松村さんは「注文の量が少ないと、配達業者が対応してくれないので結果的に買えない。それなりに多くの購入希望者を募る必要がある」と事情を説明する。

共同購入する際に住民が使うのは、WeChat(日本のLINEに相当するアプリ)のグループ機能だ。多くの場合、マンションの棟単位で1つのWeChatグループがある。そのグループに入っている住民がそれぞれ「〇〇が欲しい」と投稿する。それにほかの住民が「私も購入希望」と応じ、野菜であれば30箱程度集まれば共同購入できるという流れだ。また、共同購入できそうな品物のリストがシェアされることもある。

その半面、「自分が〇〇を欲しい」とグループに投稿しても、希望者が多く集まらなければ運送業者が注文を受けてくれない。松村さんは「アボカドやバター、パンが食べたくてグループに上げてみたけれど共同購入できなかった」と苦笑いする。

共同購入の支払いももちろんWeChatの機能を使う。かねてキャッシュレス社会である中国では老若男女、デジタルマネーでの支払いに慣れている。ロックダウンで人間同士の接触を減らす際に有効な支払い手段でもある。

政府から配給されたキュウリ、ニンジン、キャベツ。松村さんは「これだけ?」と思ったが、隣人の子どもは大喜び。野菜を並べて「花木」という文字を作った。花木路は、松村さんが住む地区の名称

政府から配給されたキュウリ、ニンジン、キャベツ。松村さんは「これだけ?」と思ったが、隣人の子どもは大喜び。野菜を並べて「花木」という文字を作った。花木路は、松村さんが住む地区の名称

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