上海の厳しいロックダウンで「助け合い精神」が復活!? 黒酢の貸し借りも

おすそ分けのお返しに、隣人の子どもが中華風クレープを焼いてくれた。クレープだけでなく、作っている最中の写真もWeChatに届き、松村さんもほっこりおすそ分けのお返しに、隣人の子どもが中華風クレープを焼いてくれた。クレープだけでなく、作っている最中の写真もWeChatに届き、松村さんもほっこり

仕切り役はボランティア

共同購入を取り仕切るのは「団長」と呼ばれる人たちだ。団長の仕事は、必要な食料や生活必需品の要望を住民から聞き、注文をとりまとめ、集金し、購入先と運送業者を手配し、また時には「品物が腐っている」といった住民からのクレームにも対応すること。すべてボランティア。団長も住民のひとりだ。

松村さんは「私のマンションでは社交的な40代前半の男性と30代後半の女性が団長に名乗り出てくれた。倉庫に食材のストックをもつ業者や運送会社を見つけるのも大事な役目だ。どんな食料が確保できるか、すべては団長の力にかかっている」と説明する。

こうした仕事は簡単ではない。「共同購入で使える購入先や運送会社のリストなどない。人づてで業者は探さないといけないし、交渉もしないといけない。私のマンションは大型スーパーの隣。そのスーパーの店長が入手可能な食料をWeChatグループにアップしてくれるので本当に助かっている」(松村さん)

団長なくして共同購入は成り立たない。共同購入の団長を務めた経歴は履歴書に書ける、と上海ではいわれているという。

日本人が中国社会に溶け込む

ユニークなのは、ロックダウン下の共同購入が、日系企業の駐在員にとっては中国人コミュニティに溶け込むきっかけにもなっていることだ。

ロックダウンの前は近所付き合いがほとんどなかった日系企業の社長が、マンションの入り口に届いた品物をそれぞれの家庭に配るボランティアを始め、中国人の隣人たちから頼りにされるようになった例もある。「(共同購入の運送業者はゼロコロナ政策として宅配してくれないから)とりわけ大きなマンションの場合、品物を家まで運ぶのが一苦労。結果的に、ロックダウンが日本人駐在員と中国人を近づけてくれた」(松村さん)

中国語がそれほど堪能でない駐在員の場合、スマートホンやインターネットの翻訳機能を駆使して共同購入に加わった例もある。松村さんは「WeChatグループのやりとりは基本的に中国語。でも文字ベースのため自動翻訳を使えば(中国人のコミュニティである共同購入のグループの)中に入っていける」と話す。

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