上海の厳しいロックダウンで「助け合い精神」が復活!? 黒酢の貸し借りも

おすそ分けのお返しに、隣人の子どもが中華風クレープを焼いてくれた。クレープだけでなく、作っている最中の写真もWeChatに届き、松村さんもほっこりおすそ分けのお返しに、隣人の子どもが中華風クレープを焼いてくれた。クレープだけでなく、作っている最中の写真もWeChatに届き、松村さんもほっこり

おすそ分けで隣人と親密に

助け合いは共同購入だけにとどまらない。近所同士での食材のやりとりの輪も広がっている。ロックダウンの前にはほとんど見られなかった光景だ。

20年以上にわたって同じマンションで暮らす松村さんは「うちは分譲マンションのため、近所の人の素性はそれなりに知っていた。だけどあいさつを交わす程度。それがロックダウンになった途端、食べ物を融通しあったりするようになり、親密になった」と語る。

松村さんと同じ階には母子家庭が住んでいる。アイスキャンディーと果物をおすそ分けしたところ、お返しにお手製の美味しい中華クレープをもらった。「その家の11歳の子どもから、クレープを作っている最中の写真付きで『クレープをドアノブにかけたよ』とメッセージが届いた」と松村さんは嬉しそうに語る。

豊かになった上海では姿を消した「昔ながらの調味料の貸し借り」も復活した。餃子を食べようとしたら、黒酢を切らしていたことに気づいた松村さん。コロナ禍の前から仲良しだった別の階の老夫婦に電話したところ、「玄関のドアのところに空き瓶をかけておいてくれれば、黒酢を少し分けてあげるよ」と嬉しい返事が。その後ほどなくして「取りに来て」と老夫婦からWeChatにメッセージが入った。

北京出身の隣人ともロックダウンをきっかけに仲良くなったという。「これまでは私があいさつしてもあまり愛想が良くないので、ちょっと敬遠していた。だけどある時、豆腐が手に入ったので、おすそ分けしてみた。すると、豆腐のあんかけ料理をお礼にもらった。隣人の出身地である北京の家庭料理でとても美味しかった」(松村さん)

伝説のロック歌手がコンサート

助け合いはマンションの外にも広がった。

そのひとつが、WeChatを使った無料のオンラインコンサート「继续撒点野」だ。1980年代のロックスターで、中国でのロックンロールの創始者といわれる崔健(ツイ・ジエン)は4月15日、3時間に及ぶロックコンサートをWeChat上で初めてライブ配信した。厳重なロックダウン下に置かれた上海市民を励ますというのが目的だ。

崔健は、今の中国を支える1960年代生まれの人たちの間ではレジェンドだ。1989年に北京で起きた民主化運動「天安門事件」に参加した当時の学生にとって、崔健が歌う「一無所有」は愛唱歌だった。松村さんは「このオンラインコンサートで、崔健は中国の庶民の魂を歌った」と語る。

崔健のライブは海外在住の中国人も含め4600万人が視聴した。この数は中国発のライブ配信で最多記録。またこの映像に1億2000万人が「いいね!」を押した。

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