続く軍の弾圧、民主化を支援する在日ミャンマー人女性「日本政府は間接的な人殺し」

ミャンマー国軍から空爆を受けたザガイン管区に隣接するミャンマー中部のマグウェイ管区にある村(写真提供:佐賀桜さん)ミャンマー国軍から空爆を受けたザガイン管区に隣接するミャンマー中部のマグウェイ管区にある村(写真提供:佐賀桜さん)

ミャンマー国軍に奪われた民主主義を取り戻すため日本で活動するミャンマー人の看護師、佐賀桜さん(日本名、32歳)が11月16日、「在日ミャンマー人から日本のみなさんへ。5つのお願い」と題したオンラインイベントで祖国の状況を語った。佐賀さんは「国際社会が私たち(ミャンマーの市民)を無視したから、看護師や大学教授だった私の友人も武器を取って国軍と戦っている」と説明。日本人にも、ミャンマーが自由を取り戻すために声をあげてほしいと訴えた。

空爆は毎日のように続く

2021年2月1日に軍事クーデターが起きて1年10カ月経った今も、国軍による無差別の空爆は続く。とりわけ攻撃が止まらないのが、民主派武装勢力の拠点が多くあるミャンマー北西部のザガイン管区だ。調査団体データ・フォー・ミャンマーによると、クーデターの勃発から2022年8月25日まででザガイン管区では2万戸超の家屋が消失した。

佐賀さんが高校生のときに住んでいたザガイン管区の村も無差別の空爆にあった。学校や寺、家などすべて焼かれたという。「私の友人の家も全焼した」(佐賀さん)

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、ミャンマーの国内避難民の数はクーデターが起きてから8月30日までの1年7カ月で約100万人にのぼる。地域別ではザガイン管区が過半数の53万人を占める。佐賀さんは「避難所は不十分。国内避難民の多くは寺や学校に一時的に身を寄せている状態だ」と説明する。

「軍を非難する」と口だけ

こうした国軍の弾圧に対抗するため、佐賀さんの友人らは武器を取った。2020年11月の総選挙で選ばれた議員らが発足させた国民統一政府(NUG)の防衛組織「人民防衛軍(PDF)」の兵士として戦場の最前線に行く。「大学教授だった女性が今や、銃を持って国軍と戦っている」(佐賀さん)

医療スタッフとして戦場でけが人を手当てする友人もいる。看護大学の教授と看護師長だった女性たちだ。うちひとりはフェイスブックに「戦場で必死に手当てをしても、次から次に仲間たちが亡くなる。いっそ自分も死んでしまいたい」と苦しい胸の内を書き込んだという。佐賀さんは「彼女たちのことが毎日心配」と憂う。

PDFの兵士らは中高生から会社員、医療従事者、公務員、国軍のやり方に反対した元軍人や元警察官までさまざまだ。PDFはミャンマー全土で約300グループに分かれており、1グループの兵士は200〜500人とされる。「平和的にデモをしていた友人が国軍に殺された。それが悔しくて、戦うことを決めた中学生もいる」(佐賀さん)

医療従事者や教師が職務を放棄することで軍への抗議の意思を示す「市民的不服従運動(CDM)」も続く。

CDMに参加する医者は患者の家に行き、ボランティアで治療する。見つかると国軍に連行されるから医師も命懸けだ。佐賀さんの知り合いの医師も6人捕まった。4人はのちに解放、1人は死亡、1人は連絡が取れないまま。遺体は返ってこない。

佐賀さんによると、ミャンマーの市民が命懸けで軍政に対抗するのは、平和的なデモを武力で弾圧する国軍に対して国際社会が何の行動も起こしてくれないからだ。「軍を非難する、と口で言うだけ」と憤る。

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