「王室改革」を強く求めたタイ国民、クーデターは起きるのか

第1党に躍進した前進党の支持者ら。若い世代を中心に支持を広げた。バンコクにある33の小選挙区で32議席を獲得するなど、都市部で圧勝した。写真はチェンマイ

ミャンマーのようになるのか

「最悪のケースは、前進党が勝ちすぎたときだ」

これは、タイの研究者が投票日の前に発した言葉だ。

前進党が不敬罪の見直しなど王室改革に踏み込めば、絶対的権力をもつ国王は黙っていない。そうなると国王は憲法裁判所を使って前進党への解党命令を出すか、最悪のケースは国軍を使ってクーデターを起こすということだ。

ナロンパン陸軍司令官は投票日の前、「私が司令官である限りクーデターはない」と断言した。だが彼の任期は4カ月後の9月末までだ。開票結果が出た後、軍事クーデターの可能性について聞かれたプラユット首相は何も答えなかったという。

王室改革に踏み込んでいないタクシン派の政権ですら、軍事クーデターで2度倒された。ましてや今回第1党になったのは王室改革を求める前進党。何も起こらないほうが難しい。

だが軍事クーデターにしろ解党命令にしろ、もし国王が民主派の政権をひっくり返したとき、タイ国民は今度こそ黙っていないかもしれない。

タイ貢献党が政権を追われた2014年のような「政治的な対立を鎮静するための軍事クーデター」というレトリックはもはや通用しない。

3度目の軍事クーデターが起きたら、タイ国民はそれを許すのか。2020年以上の激しいデモと衝突が起き、隣国ミャンマーのような流血の事態に陥る危険性もありそうだ。

不敬罪の廃止を訴えるデザインのTシャツ。選挙で躍進した前進党は刑法112条(不敬罪)の改正を主張する。連立政権に参加する政党の間で5月22日に同意された政策の中に刑法112条の改正は入らなかった。タクシン派のタイ貢献党が難色を示したといわれる

不敬罪の廃止を訴えるデザインのTシャツ。選挙で躍進した前進党は刑法112条(不敬罪)の改正を主張する。連立政権に参加する政党の間で5月22日に同意された政策の中に刑法112条の改正は入らなかった。タクシン派のタイ貢献党が難色を示したといわれる

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