NGOシェアが「保健の船」で東ティモールの離島に医療を届ける、ヤマハ発動機が釣り船改良

東ティモールのアタウロ島で活躍する「保健の船」。ヤマハが船を選び、シェアが現地での運行をサポートした。船は2つのエンジンを搭載する東ティモールのアタウロ島で活躍する「保健の船」。ヤマハ発動機が船を選び、シェアが現地での運行をサポートした。船は2つのエンジンを搭載する

国際協力NGO「シェア=国際保健協力市民の会」は、小型船を使って東ティモールの医者がいない村に医療スタッフや薬を届けるプロジェクトの活動報告会を開催した。このプロジェクトでタッグを組んだのがヤマハ発動機。最適の船を選び、それを改良した。地元の人はこの小型船を「保健の船」と呼ぶ。

妊婦は2時間歩いて病院に 

プロジェクトを実施した場所は、東ティモールの首都ディリから北に約30キロメートル離れたアタウロ島。大きさは日本の大島とほぼ同じで、約1万人が住む。

アタウロ島は山で分断されており、東西のアクセスは悪い。シェア東ティモール事務所代表の巣内秀太郎さんは「(アタウロ島の)西側には車の通れる道がない。東側にある病院に行くために、患者も妊婦も舗装されていない山道や海岸沿いを2時間以上も歩いて行くこともある」と説明する。

こうした問題を解決するためシェアが2019年に始めたのが、無医村に薬を届けたり、医療スタッフを送るための保健の船の運行だ。

どんな船を選ぶべきか。シェアが相談した相手がヤマハ発動機だった。同社が薦めたのは和船と呼ばれるモデル。日本で釣りレジャーや作業船に使われる全長7メートル弱の船は、汎用性と積載量が高い。港がない浜辺での乗り降りにも適する船体は、医療スタッフや薬を運ぶのにマッチする。

ヤマハ発動機はこの和船の底を厚くし、船首部をステンレス金具で補強した。岩が多いアタウロ島の岸に対応するためだ。エンジンは主機と補機のふたつを搭載。主機が壊れても補機で帰って来られるよう安全面にも配慮した。

ヤマハ発動機はかねてから、世界各地で国際協力をしてきた。その一例がクリーンウォーターシステム事業。ランニングコストが安く、また管理も簡単な浄水装置をアフリカやアジアの各地に設置し、地元の人が安全な水にアクセスできるようにする。

船選びに携わったヤマハ発動機の渡邊基記さんは「ヤマハは(小型)船もエンジンも専門。(シェアから相談された時)これは自分たちがすべき仕事だと直感した」と振り返る。

医療スタッフが新生児に予防接種をしているところ。アクセスの悪いアタウロ島の住民にとって保健の船は生命線だ

医療スタッフが新生児に予防接種をしているところ。アクセスの悪いアタウロ島の住民にとって保健の船は文字通り「生命線」だ

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