「ベッドで毎晩泣いていた」 コロンビア避難民が内戦やうつを乗り越えチリで結婚!?

0829カミラさん

チャリティで自尊心アップ

惨めな暮らしに嫌気が差した別の姉がカウカシアを出てアヒサルに移り住んだ。姉の子どもを世話することを条件にカミラさんも一緒に行くことを認めてもらった。

アヒサルは、メデジンのすぐ隣に位置する国内避難民やベネズエラ難民といった貧困層が多く住むエリアだ。カミラさんはここで保育士として働き始める。近所に住むおじが幸い姪をみてくれたので、仕事に打ち込むことができた。

ところが今から半年前、甲状腺の病にかかった。体調が優れないため保育士を休職することに。病院に何度か行ったものの、当時は何の病気かわからず、原因不明の不調に苦しんだ。後から、甲状腺の病にかかるとホルモンバランスが悪化し、精神的に落ち込むこともあると知った。「ベッドから起きられなくなった」(カミラさん)。うつ病だ。

追い詰められたカミラさんの人生を変えたのは、ひとりの女性との出会いだった。その女性は、アヒサルの貧しい人たちの生活向上を支援するNGOコアパスを主宰するサンドラ・プエルタさん。母親的な存在の地域のリーダーだ。

カミラさんはうつの間、サンドラさんに連れられ、チャリティーイベントによく参加した。子どもや貧しい人たちに奉仕していると、頭の中のモヤモヤがパッと晴れやかになった。

「人を助けて笑顔にすることは、私にとって生きがい」。そう思うようになったカミラさんは気づけばうつを克服していた。

「自分の家族が大変なのに、自分は何もできない」と毎晩泣いていた自分はもうなかった。自信をつけたいま、母やきょうだいを幸せにすることを最優先に生きようと決意した。

新天地でエンパナーダ売り

カミラさんには実は、チリで暮らす姉がひとりいる。カミラさんはこの姉を頼ってチリへ行く予定だ。2人でこの10月から、手押し車を使ってエンパナーダ(大きな揚げ餃子みたいなもの)を路上で売るビジネスを立ち上げる計画。目的は、家族のためにお金を稼ぐことだ。

自立しつつあるカミラさんだが、心の中も変わりつつある。

カミラさんは昨晩、大好きな姪に「(カミラさんが)いなくなるのが寂しい」と言われ、初めて人前で泣いた。「ちょっと恥ずかしかった」。ただかつては何もできない無力さからくる悲しい涙だったが、いまは違う。前向きに生きる証となる涙だ。

父と友だちの父の殺害、荒れた暮らし、甲状腺の病、休職、うつ‥‥これらを乗り越え、未来への希望を24歳になって見つけたカミラさん。「自分がいま一番したいのは家族を幸せにすること。その次に自分の家族の幸せ。私はまだ結婚していないけれど、チリでいいひとが見つかったら」とはにかんだ。

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