【西サハラの声④】モロッコ警察のデモ隊への暴行、最初に狙うは障がいを抱える活動家

左半身に身体障がいを抱える人権活動家のサイード・ハダッドさん。これまで幾度もモロッコ警察に拘束され、暴行を受けてきた左半身に身体障がいを抱える人権活動家のサイード・ハダッドさん。これまで幾度もモロッコ警察に拘束され、暴行を受けてきた

「モロッコ警察は相手が障がい者だろうが関係なく暴行する」。こう話すのは、アフリカ最後の植民地である西サハラの独立を訴える活動家のサイード・ハダッドさん(40)だ。ハダッドさんは生まれながらに左半身に身体障がいを抱える。それをいいことにモロッコ警察はデモの時、サイードさんを真っ先に捕まえ、暴行を加える。(連載「西サハラの声」第1回はこちら

ラクダのふんを口に押し付け

ハダッドさんは西サハラの最大の都市ラユーン在住。古来から西サハラに住む遊牧民サハラーウィのひとりだ。ハダッドさんは舌に力が入らず、はっきりと話せない。また左腕と左足が不自由で、歩いたり走ったりするのも難しい。

ハダッドさんはデモの時、モロッコ警察から標的にされ、暴行を受ける。ハダッドさんの友人はこう唇をかむ。

「ハダッドは身を守ることも、反撃することもできない。そんな彼にどうして暴力を振るえるのか。人間の素行とは思えない」

これまで何度も暴行を受けてきたハダッドさんだが、一番ひどかったのは2010年、イデイム・イジークキャンプに参加した時だ。

イデイム・イジークキャンプとは、モロッコ政府による西サハラの支配や人権侵害に抗議して、1万人以上のサハラーウィがラユーン郊外でキャンプを張ったデモ活動のこと。これに対してモロッコ政府は警察と軍を投入。その掃討作戦で36人のサハラーウィが命を落としたといわれる。

ハダッドさんも当時、イデイム・イジークキャンプに毎日参加し、シャワーの時だけラユーンに帰るという生活をしていた。だがある日、キャンプに行く途中で警察に捕まった。ラユーンの中心地から25キロメートルほど離れた場所に連行されると、手首をロープで締められ、そのまま車で引きずられた。その後も4〜5人の警官から殴る蹴るの暴行を受け、身体は血だらけ。ラクダのふんを口に押し付けられ、窒息しそうになった。

警官らは「治療を受けたかったらポリサリオ戦線(アルジェリアにベースを置くサハラーウィの政治・武装組織)にでもお願いするんだな」と笑って、ハダッドさんを置き去りにした。

サハラーウィが立ち上げた亡命政府「サハラ・アラブ民主共和国」の国旗。アルジェリアの難民キャンプにベースを置く

サハラーウィが立ち上げた亡命政府「サハラ・アラブ民主共和国」の国旗。アルジェリアの難民キャンプにベースを置く

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