2016-02-05

講談社がインドで読み聞かせ! JICAが8つのBOPビジネス調査案件を採択

国際協力機構(JICA)は、「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」の2015年度第1回、通算第9回となる公募を行い、今般、採択案件として8件を選定しました。(別表:採択案件一覧表参照)

本制度は、途上国の貧困層(BOP:Base of the Pyramid)を主な対象とする「BOPビジネス」への日本企業の参画を後押しするため、2010年度に導入した公募型事業です。民間企業から、優れた製品やノウハウ、アイデアを活かしたBOPビジネスの提案を募り、採択された企業に対して最大5千万円を上限に、ビジネスモデルの検証やJICA事業との連携可能性を検討するための現地調査を委託しています。

今回の採択案件の主な特徴としては、カカオの高付加価値化や淡水魚の養殖販売、漁業の近代化など、農水産品の生産・加工技術を高めることにより、BOP層生産者の所得向上や自立を促すビジネスなどが挙げられます。また、医薬品のハラル対応、乳酸菌飲料の宅配、絵本を通じた衛生教育、ヘルスチェックを通じた健康増進、無電化地域への照明・電力供給など、新たな商品やサービスの提供により、BOP層消費者の健康や教育、生活改善につながるビジネスも含まれています。対象地は、アフリカ、東南アジア、南アジアと広範囲に亘りますが、特にアフリカにおけるビジネスが半数を占める点に今回の特徴があります。

近年、BOPビジネスは、BOP層を消費者として製品やサービスを販売するものだけではなく、生産や加工、流通など、バリューチェーンの様々な局面においてBOP層を事業パートナーとして巻き込むものまでが対象と捉えられつつあります。また、BOP層と同時に、MOP層(Middle of the Pyramid:中間層)以上も対象に含めたビジネスモデルを構築することで、BOPビジネスを継続可能とするアプローチにも注目が集まっています。本制度を通じて、日本企業が将来の成長市場で早期の足掛かりを作ると同時に、開発途上国の課題解決に対して、ビジネスの原理を活かした革新的で持続的な取り組みが一層促進されていくことが期待されます。

JICAは、今回の公募で採択した案件について、企業が進める事業化の実現を支援していきます。また、これまで採択した調査案件を基に、BOPビジネスに係る知見・教訓、グッドプラクティスの整理等、情報発信を通じたBOPビジネスの取組み全体への支援も強化していきます。

なお、次回(第10回)の公募は、今年4月を予定しています。

■採択案件一覧

1)

国名:インドネシア

法人名:エーザイ株式会社

案件名:医薬品ハラル対応事業準備調査(BOPビジネス連携促進)

概要:ムスリム(イスラム教徒)数が世界最大の国であるインドネシアにおいて、ハラル対応の医薬品を製造・販売することで、BOP層を含むムスリムの医薬品アクセスの改善を目指すもの。

2)

国名:ミャンマー

法人名:株式会社ヤクルト本社

案件名:乳酸菌飲料宅配事業準備調査(BOPビジネス連携促進)

概要:就労機会の乏しい女性に対して、腸内環境を整える乳酸菌飲料の販売員「ヤクルトレディ」として職業訓練を行うことで、能力開発及び就労の機会を提供し、女性の自立・収入向上を図るとともに、対面販売を通じた消費者の健康意識の増進を目指すもの。

3)

国名:ミャンマー

法人名:パナソニック株式会社

案件名:ソーラーストレージユニット/ランタン販売事業準備調査(BOPビジネス連携促進)

概要:農村部を中心とした無電化地域に住むBOP層に対し、高品質・高性能のソーラーストレージユニットとソーラーランタンの二種類の商品を販売することで、安定した照明及び電力の供給を通じて、BOP層の生活改善を目指すもの。

4)

国名:インド

法人名:株式会社講談社

案件名:環境・衛生教育を目的とした絵本の読み聞かせ販売事業準備調査(BOPビジネス連携促進)

概要:ゴミの不法投棄や屋外排泄が恒常化しているインドでBOP層の女性たちが読み聞かせ活動を通じて、日本の環境・衛生教育の絵本を販売し、深刻化する環境・衛生問題の改善を目指すもの。

5)

国名:ケニア

法人名:株式会社キャンサースキャン

案件名:ヘルシーキオスク事業準備調査(BOPビジネス連携促進)

概要:非感染性疾患が広まりつつある農村部において、ヘルスチェックのサービス提供とともに、健康情報と購買履歴を利用して行動変容を促すソーシャル・マーケティングの手法を活用し、住民の健康状況に応じたフォローアップを継続する「ヘルシーキオスク」を展開することで、BOP層の健康的な生活習慣の定着を目指すもの。

6)

国名:マダガスカル

法人名:有限会社テオブロマ

案件名:カカオフードバリューチェーン構築事業準備調査(BOPビジネス連携促進)

概要:零細カカオ農家に対して、森林生態系を維持しながら農業経営を行う「アグロフォレストリー農法」と、発酵・乾燥等による生豆の一次加工法の普及を通じて、カカオの収量・品質向上による生計向上を図るとともに、安全かつ品質の保証されたカカオのフードバリューチェーンの構築を目指すもの。

7)

国名:モザンビーク

法人名:株式会社A-ONE

案件名:ティラピア養殖・販売事業準備調査(BOPビジネス連携促進)

概要:淡水魚(主にティラピア)の養殖及び販売に至るバリューチェーンの構築を通じて、BOP層の消費者に対して、安価かつ衛生的な高蛋白源を提供することにより、深刻な栄養状況の改善と新規雇用機会の提供を目指すもの。

8)

国名:セネガル

法人名:ヤマハ発動機株式会社

案件名:FRP船製造・販売事業準備調査(BOPビジネス連携促進)

概要:保冷庫を搭載し、軽量で強度のあるFRP(繊維強化プラスチック)船の現地製造・販売を通じて、漁獲物の鮮度維持、漁場の拡大、並びに燃費向上による維持費の削減をもたらすことにより、零細漁民の収入向上及び安全な操業を目指すもの。

プレスリリース:http://www.jica.go.jp/press/2015/20160205_01.html