シリア難民の子どもが抱える不安・孤独・苦痛、UNHCRは「この惨状を世界はもっと知るべき」

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、レバノンとヨルダンに避難中のシリア難民の子どもたちの実態を伝える報告書「シリアの将来―危機の中で生きる難民の子どもたち―」を発表し、多くの子どもが不安や孤独、苦痛を感じながら生きていることを明らかにした。親と離ればなれになってひとりで避難生活を送っていたり、教育を受けずに違法な児童労働に従事している子どもは大勢いるという。

報告書によると、父親がいないシリア難民の家族は7万世帯以上。両親またはどちらかの親と離れて暮らしている子どもの数は3700人にのぼる。こうした状況は、子どもであっても家計を支える重要な担い手になっているケースが少なくないことを示している。

2年8カ月に及ぶシリア紛争は、子どもたちの体と心に大きなダメージを与え続けている。レバノンでは2013年1~6月に741人のシリア難民の子どもがけがなどを理由に病院で受診している。ヨルダンにあるザータリ難民キャンプではここ1年で1000人以上の子どもが紛争で負傷し、治療を受けた。

心のダメージも深刻だ。「シリアに戻って戦いたい」と発言する難民の少年グループも多く、シリアに戻る日のために少年たちは戦闘訓練を受けている、との報告もある。

シリア難民の子どもの過半数が学校に通えていない。レバノンでは就学対象年齢の子ども20万人が、2013年末まで教育を受けられない状態が続く。学校に行けないという事態は、子どもたちから希望を奪っている。子どものひとりは「紛争が私たちの人生を壊した。今は教育を受けていないが、これは私たちには将来はないということ。破滅へと日々突き進んでいる」と話したという。

出生証明書の問題もある。紛争のさなかに生まれ、出生証明書のない子どもはたくさんいる。無国籍者にならないためにも出生証明書は必要不可欠だ。だがUNHCRがレバノンで実施した調査では、難民の子ども781人のうち77%が出生証明書をもっていないことがわかった。ヨルダンのザータリ難民キャンプでも、2013年1月~10月半ばに発行された出生証明書はわずか68人だった。

シリア難民の子どもは110万人以上にのぼるが、その大半がシリア周辺国に避難している。アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は「紛争がもたらしたこの惨劇を国際社会はもっと知るべき。われわれが行動を即起こさなければ、子どもたちはこの先もずっと紛争の被害者であり続ける」と訴える。