経済成長だけで貧困は根絶できない、OECDが「開発協力報告書2013年版」

経済協力開発機構(OECD)は、貧困を撲滅するには経済成長だけでなく、社会的差別をなくす必要があるなどと盛り込んだレポート「開発協力報告書(DCR)2013年版:貧困の根絶」の日本語要約版を発表した。ポイントを下にまとめた。

■MDGsの成果・貧困とは何か

・ミレニアム開発目標(MDGs)は、貧困削減に向けた政治的支援を活性化させた。これが奏功し、極度の貧困状態(1日1.25ドル以下で暮らす人たち)の人口の割合を半減させるという目標はおそらくすでに達成済み。

・だが国や地域、人口集団、男女によって、MDGs達成への進ちょくは異なる。

・貧困は所得のみの問題ではない。経済成長だけでは貧困のあらゆる側面を根絶したり、すべての人に恩恵をもたらすことはできない。

・貧困層は貧困国だけに存在するのではない。新たな「最底辺の10億人」がいるのは、インドや中国などの中所得国。

・「貧困の根絶を目指す」というだけでなく、「新たな貧困を生み出さない」ことも重要。慢性的な貧困から脱け出せない人は少なくとも5億人いる。だが新たな貧困が生じるのを防ぐ特別な政策も策定すべき。

■貧困撲滅への新たな目標のあり方

・新たなヘッドライン指標を作成して、あらゆる形態の貧困撲滅に向けた進ちょくを測定し、既存の所得貧困指標を補完すること。

・人々が新たに貧困化しているかどうかを追跡する。このために所得格差の是正目標や格差指標などを含める。

・男女平等と女性の登用という目標を、すべての目標に組み込む。

・国際的に調整された整合性のある国家的な貧困指標に基づき、新しいグローバルな所得貧困削減目標を設定する。

■貧困撲滅への新たな指針の考え方

・女性や慢性的な貧困層の社会的地位を向上させるには、そうした人たちの足かせとなっている「社会的差別」を撤廃する必要がある。開発協力機関、政治運動、市民社会組織(CSO)はこうした権力の転換を支援できる。

・包括的で持続可能な経済は、貧困層が成長に参加し、その恩恵を受けることを可能にする。これには農業、教育、エネルギー、雇用などの政策・プログラムの抜本的な方向転換と優先順位の見直しが欠かせない。

・雇用保障、現金給付、年金、児童・障害手当など社会保障制度の整備は、貧困層が生計を維持し、資産を築き、経済機会にアクセスし、気候変動などのショックに耐えることを可能にする好循環を生み出す。

・環境の持続可能性と天然資源を中核的な優先課題とする。

・小規模の農家に投資する。小規模農家への投資は、農村部が多い貧困国の貧困問題に対処し、幅広い基盤をもつ経済成長を促進することにつながる。