セブの小作人の苦悩、42歳年下のいとこの息子に「働かせてください」

20140915(2)カルノト・ポパイさん

フィリピン・セブ市のはずれ、ソドロンⅡにある大きな農地。そこで働く、一見すると何も問題がなさそうな2人。しかし彼らの関係は複雑なようだ。

「ここで働かせてください、とオーナーに頼みこんだ」と語るのはカルノト・ポパイさん、66歳。1年前からいとこの息子のライアン・セクレタリアさん(24)のもとで働き始めた小作人だ。カルノトさんは幼いころからこの村で畑仕事をしていて、小学校さえ通ったことがない。「もし教育を受けていたら、私がここのオーナーだったかもしれない。他の農民を雇ったりして」と語るカルノトさんの視線は、現オーナーのライアンさんに向けられていた。

ライアンさんとカルノトさんは血縁関係にあるが、彼らの人生は全く異なる。カルノトさんは常に誰かのもとで働いてきた小作人。推定年収は約7万2000ペソ(約18万円)で、フィリピンの平均年収(約20万ペソ=約50万円)の3分1。対してライアンさんはビサヤ大学大学院を卒業したエリートだ。現在は、農作物を育てるマラアグ・ファーマーズ・アソシエーションのオーナーとして30ヘクタール(東京ドーム約6.5個分)の農地を管理している。平均年収は約78万ペソ(約195万円)で、国の平均年収の約4倍だ。

「彼はいいボスだよ。私に仕事をくれるし」。そこで話をやめてしまったカルノトさん。土地を買うことを考えたことはあるかという質問に対して「土地は金持ちがもつものだ。私には土地なんて買えない」と寂しげな表情を浮かべた。

一方、「いつかは教師になって、若い世代に農業を教えたい」と流暢な英語で話すライアンさん。教育関係はフィリピンで最も高い月収を得られる職業のひとつだ。同じ家で暮らし、同じ農地で働く2人。しかし、彼らの間には大きくなり続ける「経済格差」という問題があるようだ。(野口麻里奈)