学校への攻撃が「紛争の戦術」になっている、国際機関・NGOが警鐘

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学校をはじめ、生徒や教師らが世界各地の紛争で攻撃のターゲットになっている。これはもはや紛争の戦術だ――。国際機関と国際NGOで構成する「教育を攻撃から守る世界連合」(GCPEA)はこのほど、「攻撃される教育 2014年版」と題する報告書を発表。2009~13年に70カ国で武力紛争があり、このうち半数近い30カ国で学校や生徒・教師をターゲットにした攻撃があった事実を明らかにした。

学校や生徒・教師への攻撃について報告書は主に4つのパターンを挙げている。第一は、敵対する勢力を支持する地域に報復として攻撃する場合。第二に、学校や教師を“国家の象徴”とみなして危害を加え、政府の統治能力がないことを示そうとする場合。第三に、学校を拠点化する勢力を攻撃する場合。第四に、特定の思想の普及(女子教育など)を妨害するために攻撃する場合だ。

報告書によると、紛争当事者が学校を占拠し、基地や兵舎、射撃場所、武器庫として使っているケースは少なくない。アサド政権と反体制派による紛争が3年以上続くシリアではおよそ1000の学校が拘禁や拷問の場所になっているという。安全な学びの場であるはずの学校が、紛争がひとたび起きると軍事利用される実態がある。

GCPEAのディヤ・ニジョーネ代表は「教育関係者は無防備で手ごろなターゲットとみなされ、爆撃、放火、射撃、脅迫、拉致される。紛争当事者は、教育関係者を紛争戦術として攻撃すべきではない。学校の破壊や軍事利用は、教育を受ける権利をも奪っている」と問題視する。

ミャンマー中部のメイクテーラでは2013年3月、仏教徒200人がイスラム学校に放火。生徒に暴行し、1人の首をはねた。この事件では生徒32人と教師4人が殺されたという。学校が宗教対立の戦場と化したのだ。

ソマリアでは、武装民兵組織が学校に築いた基地を拠点に政府軍と戦っている。ある少年は、授業中に学校が攻撃されたときのことを「かみなりのような音がし、大きな爆発があった」と振り返った。この攻撃で子ども3人が死亡、6人が負傷した。

ナイジェリア北部では2013年7月、イスラム武装勢力「ボコ・ハラム」の兵士が学校の寮を襲撃。生徒の就寝中に放火し、逃げようとする生徒に向け発砲した。少なくとも生徒22人と教師1人が死亡した。直後に公開されたビデオで、ボコ・ハラムの指導者は犯行を認め、こう宣言した。「西洋式の教育を行う教師たちよ、殺してやる」

またメキシコでは、ナノテクノロジーに反対する集団が、大学構内と研究施設を7回にわたって爆弾攻撃、研究者1人を殺したケースもあった。宗教や政治的イデオロギーの違いだけでなく、イノベーションに対する考えの相違でさえ学校への攻撃を生む土壌となっている。

報告書によれば、09~12年に、生徒や教師が特に危険な状況に置かれていたのは、アフガニスタン、コロンビア、コートジボワール、コンゴ民主共和国、イラク、イスラエル・パレスチナ、リビア、メキシコ、パキスタン、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの13カ国・地域。それぞれの国・地域では、学校への攻撃・軍事使用が少なくとも500件以上、死者は500~1000人と推定されている。

GCPEAの構成メンバーは、難民支援大学人評議会(CARA)、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)、国際教育研究所、不安定情勢と紛争下における教育の保護プログラム、セーブ・ザ・チルドレン、危険な状況にある研究者保護ネットワーク、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)。(堤環作)