シリアの最前線で戦う新婚カップル、「家族の元に戻ることはない」

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1月28日付アルジャジーラは、シリアの内戦で、打倒アサド政権を掲げて戦う新婚カップルを紹介する記事を掲載した。マームード・アルアハラビさん(28)はかつて、シリア閣僚夫人の運転手だった。ヌール・アルハッサンさん(22)は美容師だった。アサド政権を打倒する蜂起の始まりから、それぞれの思いを抱いて、2人は反政府勢力に合流した。

マームードさんは3年前に失業し、アサド政権により投獄された。その罪状は「閣僚の娘と恋に落ちたこと」。1年間獄中で拷問を受け続けた後、シリア国外へ追放される。リビアで彫刻家として腕を磨いたが、2011年2月に革命が勃発し、カダフィ大佐掃討作戦に加わった。

ヌールさんは、シリア与党であるバース党高官の娘で、アレッポの美容院で働いていた。一方で、フェイスブック上に匿名でアカウントを作成。政権の弾圧にかかわるニュースをソーシャルメディア上に拡散し、抗議活動を展開する。それが父と兄に見つかり、殴打され、病院へと追いやられた。

シリア蜂起の数カ月前、マームードさんは、アサド政権を打倒する仲間に合流するため帰国して、アレッポにいた。町の噂となっていたヌールさんのことを知ったマームードさんはヌールさんを病院から連れ出す。2人で政権を批判するビラを配布し、抗議活動を組織化した。活動は武力蜂起につながり、マームードさんはヌールさんに、自衛のために銃の扱いを教えた。一流の狙撃手として反政府勢力で頭角を現したヌールさんは「戦線に加わっている時、女性であることを捨てている」と言い切る。

女性兵士はシリアでは珍しいが、反政府勢力として銃を手に戦う女性の姿が、しばしば報道される。アサド政権側もまた“テロとの戦い”に女性兵士を配備している。

マームードさんとヌールさんは、出会ってから1年後の2012年7月に結婚。「真実が見えていない両親に、私ができることは何もない」と語るヌールさんが、家族の元へ戻ることはないだろう。(今井ゆき)