「企業による植民地化」がインドネシアで進む、過去10年で収奪された土地は日本の国土の25%

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インドネシア全土で土地を巡る紛争が激化してきた。紛争の当事者は、農民、プランテーション所有者、鉱山企業、デベロッパーなどだ。ほとんどのケースで、企業が先住民(農民)から土地を収奪、森林を伐採し、パーム油などを生産するプランテーションを造成している。土地を失った農民らは、“新たな貧困”の危機に瀕している。5月25日付ガーディアンが報じた。

インドネシア国家人権委員会によると、土地紛争の件数は2011年だけで600件以上あり、22人の死者、数百人の負傷者を出した。ただこれは把握している数字のみで、実数はもっと多い可能性が高い。

2012年に起きた人権侵害行為は5000件以上だ。人権侵害行為とは、脅迫や強制立ち退き、拷問などを指す。ただ表面化しているのは氷山の一角にすぎない。このほとんどが企業の森林伐採絡みで、インドネシア小農組合(構成員は70万人)によると、インドネシア全土での土地紛争の増加を背景に、殺害される農民の数は増えているという。

企業による違法な土地買収はたいてい、地元警察や軍隊、地方政府に守られながら、実行される。土地を追われた農民らは、補償も受けていないのが実態。生活の糧を失った農民らはこのため、最低賃金をもらい、造成されたプランテーションで働く羽目になる。

インドネシアでは過去10年で合計1000万ヘクタール以上の土地が農民の手から奪われ、プランテーションが作られてきた。1000万ヘクタールとは日本の国土の4分の1以上に相当する。これは、先住民がずっと暮らしてきた数千のコミュニティが森から消滅したことを意味する。

FoE(フレンズ・オブ・ジ・アース)インドネシアのアベトゥネゴ・タリガン理事長は「インドネシアでは土地を支配する者が政治を支配する。天然資源の周りは汚職がひどい。インドネシアがいま直面している問題は、企業による森林の植民地化。スハルト政権下では、政府の陰口をたたくと牢屋に入れられたが、いまは、企業について批判すると投獄される」と話す。

FoEインドネシアのメンバー3人は実際、国営のパーム油プランテーションがかかわる土地紛争に警察と軍が関与していたと糾弾・反対運動をしたことで投獄された。紛争が激しさを増すなか、プランテーションにはかつてより多くの警官が配備され、反対運動を抑えるのに政府は必死だという。

パーム油は、食用油以外にも、マーガリンやショートニング、石けん、バイオディーゼル燃料(BDF)などの原料になる。開発が進む陰で、土地の所有権は農民から企業へと渡り、インドネシアの農村は崩壊している。